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Archive for the ‘眼窩’ Category

涙腺の病変

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米国 Wills Eye Hospital は1832年に創設された眼科病院で、腫瘍学を含む数多くの論文発表があります。
  » http://www.willseye.org/about/history/
当エントリーでは、ドイツ Fichter Nらの最新の総説論文も引用します。

涙腺の病変 142症例の臨床病理学的レビュー
Ophthalmology. 1989 Apr;96(4):431-5.
Clinicopathologic review of 142 cases of lacrimal gland lesions.
Shields CL, Shields JA, Eagle RC, Rathmell JP.
Oncology Service, Wills Eye Hospital, Philadelphia, PA.
[論文要約は下記とほぼ同じです]

涙腺病変のレビュー
Trans Pa Acad Ophthalmol Otolaryngol. 1990;42:925-30.
Review of lacrimal gland lesions.
Shields CL, Shields JA.
Ocular Oncology Service, Wills Eye Hospital, Thomas Jefferson University, Philadelphia, Pennsylvania.
[要約の邦訳]
1つの眼科大病院で25年間に行われた 涙腺生検 142検体をレビューした。涙腺病変の 78%は非上皮性起源で、原発性上皮性腫瘍は 22%に過ぎなかった。非上皮性病変は、炎症 (64%), リンパ系腫瘍 (14%)であり、一方、上皮性病変は、涙腺排出管嚢胞 dacryops(6%), 多形性腺腫 pleomorphic adenoma (12%), 悪性上皮性腫瘍 (4%)であった。これら結果は、引用されることの多い公式(教科書的な)見解「涙腺病変の 50%は原発性上皮性腫瘍であり、50%は非上皮性病変である」と相反する。

These results contradict the much quoted dictum that 50% of lacrimal gland lesions are primary epithelial tumors and 50% are nonepithelial lesions.

涙腺疾患
Ophthalmologe. 2005 Apr;102(4):399-423; quiz 424-5.
Diseases of the lacrimal gland
Fichter N, Schittkowski M, Guthoff RF.
Universitats-Augenklinik Rostock.
[要約の一部を引用]
多形腺腫 pleomorphic adenoma が除外できないとき、生検は禁忌で、被膜を含む完全な腫瘍摘出術が悪性形質転換の可能性や長期予後への悪影響を防止するために必要です。

When a pleomorphic adenoma cannot be excluded, biopsy is contraindicated and complete tumor excision with its capsule is necessary to prevent the possibility of malignant transformation and a negative effect on long-term prognosis.

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2006/02/11 at 17:14

カテゴリー: 眼窩

眼窩腫瘍と手術合併症

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眼窩腫瘍 137例の手術合併症についての論文です。
「眼窩腫瘍の手術合併症」
Ophthalmic Plastic and Reconstructive Surgery. 1992;8(2):88-93.
Complications of surgery for orbital tumors.
Purgason PA, Hornblass A.
Department of Ophthalmology, Manhattan Eye, Ear & Throat Hospital, New York.
[要約の邦訳]
   http://www.qqiac.com/2005/07/_137_3ff3.html
をご参照下さい。
1983年1月から1989年12月までの 7年間に眼窩手術を行った 152症例のうち、眼窩内容除去術症例を除外した 137症例を対象として、眼窩腫瘍術後の合併症について詳細な後向きチャート調査が行われました。
腫瘍部位、手術法の中で、合併症発生頻度の高かった側方眼窩切開術 lateral orbitotomy による筋円錐内腫瘍摘出術の結果(一部)について、抄訳いたします。
TABLE 3. Complications of lateral orbitotomies
————————————————-
Case
no. Tumor Location Complications
————————————————-
1 Lymphangioma Intraconal Abduction deficit
2 Hemangioma Intraconal Fixed, dilated pupil
3 Hemangioma Intraconal Dehiscence of bone flap
Abduction deficit
4 Hemangioma Intraconal Abduction deficit
5 Hemangioma Intraconal Fixed, dilated pupil
Abduction deficit
Neurotrophic keratitis
6 Hemangioma Intraconal Neurotrophic keratitis
7 Schwannoma Intraconal Fixed, dilated pupil
8 Schwannoma Intraconal Fixed, dilated pupil
Abduction deficit
9 Schwannoma Intraconal Abduction deficit
10 Schwannoma Intraconal ? Recurrence of tumor
11 Schwannoma Superolateral Recurrence of tumor
12 Lymphoma Lacrimal gland Abduction deficit
13 Lymphoma Lacrimal gland Hematoma
14 Adenoma Lacrimal gland Ptosis

[同表の邦訳]
表 3. 側方眼窩切開術の合併症
————————————————-
症例
番号 腫瘍名 部 位 合併症
————————————————-
1 リンパ管腫 筋円錐内 外転障害
2 血管腫 筋円錐内 瞳孔の固定, 散大状態
3 血管腫 筋円錐内 骨性移植弁の 口多[※] 開
外転障害
4 血管腫 筋円錐内 外転障害
5 血管腫 筋円錐内 瞳孔の固定, 散大状態
外転障害
神経障害性角膜炎
6 血管腫 筋円錐内 神経障害性角膜炎
7 神経鞘腫 筋円錐内 瞳孔の固定, 散大状態
8 神経鞘腫 筋円錐内 瞳孔の固定, 散大状態
外転障害
9 神経鞘腫 筋円錐内 外転障害
10 神経鞘腫 筋円錐内 ? 再発
11 神経鞘腫 上外側    再発
12 リンパ腫 涙 腺 外転障害
13 リンパ腫 涙 腺 血 腫
14 腺 腫  涙 腺 眼瞼下垂

※ 口多(シ) 開: 創部、縫合部が術後に開いてしまうこと(縫合不全など)。

側方眼窩切開術 40症例中 14例 35%に合計 18件の合併症が発生しました。合併症の大部分は、腫瘍が筋円錐内のときに発生し、およそ50% (10/21症例: 分母は筋円錐内腫瘍の全症例数)でした。
側方眼窩切開術後に合併症を来たした症例 [表 3] 14症例中10例 71% が筋円錐内腫瘍でした。

2大術後合併症: 外転障害, 瞳孔異常
【外転障害 Abduction deficit】
定義: 術後、最短期間 3ヶ月障害が存続したとき(術前状態の悪化を含む)
側方眼窩切開術 40症例中 7例 17.5%に合併。
術中に外転筋を過度に牽引したり、術後癒着により生じます。

完全に症状消失するまでの期間ないし経過:
症例 (A) 術後 5ヶ月
症例 (B) 術後 6ヶ月
症例 (C) 術後 8ヶ月
症例 (D) 手術 4ヶ月後の最終診察時、側方視時に複視あり
症例 (E) 著しい症状 8ヶ月間, 4年間で徐々に改善, 極端な側方視時のみ複視残存
症例 (F) 1年後の最終診察時に著明な外転障害あり
症例 (G) 1年後の最終診察時に著明な外転障害あり
症例 (No.3) 創部(骨)のシ開により、骨膜と外直筋が癒着したため、再手術施行。1年後の最終診察時にも外転障害は残存。

【瞳孔の固定, 散大 Fixed, dilated pupil】
側方眼窩切開術 40症例中 4例 10%に合併し、筋円錐内腫瘍の 1/4の症例で発症しました。腫瘍が視神経に接していたり、円錐内下部にあるとき、瞳孔異常と関連性がありました。内眼筋麻痺を伴う瞳孔異常を来たすことが多く、主に、外直筋と視神経の間で、かつ、総腱輪 (annulus of Zinn)の前方 10mm に位置する毛様体神経節 ciliary ganglion の障害によるものです。

他の合併症
【神経障害性角膜炎 Neurotrophic keratitis】
2症例に発生。ともに、巨大な球後の血管腫の症例でした。1例は手術治療(Gunderson 結膜弁および瞼板縫合術)、他 1例は頻回点眼治療 aggressive lubrication。
[表 3] をご参照下さい。神経鞘腫の再発については、著者は考案の中で、「神経鞘腫の再発のリスク、わずかであるが悪性変化のリスクのため、完全切除を目指す正確な摘出手術は正当化される。」と述べています。
神経鞘腫の再発例 2例 (このうち、1例は CT検査にて診断)は、再手術により (塊状ではなく) 断片 piecemeal fashion として除去されています。今回、神経鞘腫 schwannoma 7症例中 2例に再発がみられましたが、部分摘出例であっても再発はとてもまれであるとの報告があります(Rootman J.1988年)。

ここで、Miller の総説論文によると、
視神経と視神経鞘の原発性腫瘍
Eye. 2004 Nov;18(11):1026-37.
Primary tumours of the optic nerve and its sheath.
Miller NR.
Wilmer Eye Institute, Johns Hopkins Hospital, Baltimore, MD 21287, USA.

Schwannoma 神経鞘腫:
末梢神経の Schwann 細胞から発生する良性腫瘍である。好発部位は第 8脳神経の前庭神経枝や三叉神経根であるが、ときに視神経にみられることがある。視神経のミエリンは Schwann 細胞よりも 乏突起神経膠細胞 oligodendrocyte によって産生されるので、神経鞘腫は視神経鞘に強固に付着している 交感神経 に随伴するSchwann 細胞から発生するものと考えられている。・・・・

また、Shields JA らの眼窩腫瘍レビューによると、
Ophthalmology. 2004 May;111(5):997-1008.
Survey of 1264 patients with orbital tumors and simulating lesions: The 2002 Montgomery Lecture, part 1.
Shields JA, Shields CL, Scartozzi R.
Oncology Service, Wills Eye Hospital, Thomas Jefferson University, Philadelphia, Pennsylvania 19107, USA.
[要約の邦訳]
» http://www.qqiac.com/2004/11/_1264_244_5fcb.html
をご参照下さい。
眼窩内の筋円錐 cone内では、海綿状血管腫 cavernous hemangioma, 視神経膠腫 optic nerve glioma, 視神経髄膜腫 optic nerve meningiomaが多いとされています。

よって、Purgason PA らの論文において、病理診断名 Schwannoma の腫瘍が多いことにやや疑問は残りますが、眼窩筋円錐 cone 内腫瘍の術後合併症に関しては、詳細で貴重な報告です。
Miller の総説論文を再度引用しますと、
「視神経鞘の schwannoma 神経鞘腫は臨床所見だけではおそらく診断不能であり、画像診断所見は視神経膠腫 glioma に類似している」
「本報告例も、診断は手術時に確定した」
「今日まで手術が選択されていたが、多くの頭蓋内神経鞘腫で行われている 定位的放射線治療 stereotactic radiosurgery が視神経の本腫瘍にも治療オプションとして考慮されるべきである」

また、「血管腫」のうち、眼窩内の「海綿状血管腫」については、エントリー
» http://www.qqiac.com/2005/05/post_67c6.html
» http://www.qqiac.com/2004/02/post_8d46.html
もご覧ください。

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2005/08/05 at 16:29

カテゴリー: 眼窩

眼窩腫瘍 137例と手術合併症

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眼窩腫瘍の手術合併症
Ophthal Plast Reconstr Surg. 1992;8(2):88-93.
Complications of surgery for orbital tumors.
Purgason PA, Hornblass A.
Department of Ophthalmology, Manhattan Eye, Ear & Throat Hospital, New York.
[要約の邦訳]

眼窩腫瘍は、眼科手術のほんの一部であるが重要な対象であり、手術合併症についての報告は少ない。この後向きレビュー調査は、多くの眼窩腫瘍症例の全般的な合併症頻度を評価するとともに、将来、外科医の指針となりうるリスクファクターを決定するために行った。単一医療機関において、7年間に合計14名の外科医が137の眼窩腫瘍を治療した。全般的な合併症頻度は 12.4% (17/137)であり、(開頭術でない) 眼窩側からのアプローチ 前方 anterior orbitotomy 97症例中 わずか 3例 (3%)、側方 lateral orbitotomy 40例中 14例 (35%)であった。腫瘍の部位が最も重要な因子で、大部分の合併症は筋円錐内の腫瘍に関連していた

エントリー「眼窩腫瘍と手術合併症
  http://www.qqiac.com/2005/08/post_a339.html
エントリー「眼窩腫瘍レビュー 米国1264例, 日本244例」
  http://www.qqiac.com/2004/11/_1264_244_5fcb.html
エントリー「眼窩の海綿状血管腫」とエントリー内リンク先
  http://www.qqiac.com/2005/05/post_67c6.html
  http://www.qqiac.com/2004/02/post_8d46.html
もご覧下さい。

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2005/07/27 at 21:22

カテゴリー: 眼窩

眼窩の海綿状血管腫

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成人・眼窩内海綿状血管腫に関する2論文(合計 79症例) の抄訳は、
    http://infohitomi.biz/archives/000005.html
をご覧下さい。[引用文献名]
Acciarri N, Giulioni M, Padovani R, Gaist G, Pozzati E, Acciarri R. Orbital cavernous angiomas: surgical experience on a series of 13 cases. J Neurosurg Sci 1995;39:203-9.
Harris GJ, Jakobiec FA. Cavernous hemangioma of the orbit. J Neurosurg 51:219-228, 1979.

眼窩内海綿状血管腫: 214症例の解析
Orbit. 2004 Mar;23(1):33-40.
Cavernous hemangioma of the orbit: analysis of 214 cases.
Yan J, Wu Z.
Zhongshan Ophthalmic Center, Section of Ocular Oncology & Orbital Disease, Sun Yat-sen University, Guangzhou, People’s Republic of China.
[論文要約]
中国広州の中山大学 眼腫瘍眼窩疾患部門眼科センターにて、1986年1月1日から2000年12月31日までの期間に治療を行った眼窩内海綿状血管腫 全症例 (n=214) について後向きレビュー調査を行いました。このうち 126症例は女性で、88症例は男性でした。平均年齢は 39.4歳 ( 5歳から 68歳)でした。127症例では左側眼窩にみられ、87症例は右側でした。両側性のケースはありませんでした。痛みを伴わない徐々に進行する眼球突出と視力障害が主な臨床所見でした。症例の 93% (199/214)では超音波検査、CT、MRI検査により術前に正確な診断ができました。標準的外側眼窩手術 35% (75/214), 前方眼窩手術 65% (139/214) により腫瘍摘出は成功しました。前方眼窩手術法は眼窩の海綿状血管腫の治療において優れた成績が得られる重要な手術手技となりました。

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2005/05/15 at 16:23

カテゴリー: 眼窩

眼窩底骨折 手術適応と時期

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眼窩下壁骨折, 眼窩ふきぬけ (ブローアウト) 骨折と呼ぶこともあります。「ホワイト・アイ ふきぬけ骨折」の定義は文献要約 (2) をご覧下さい。[発表年代順: (2) (1) (3)]
(1) 眼窩底単独骨折の修復についての臨床的推奨: エビデンスに基づく解析
Ophthalmology. 2002 Jul;109(7):1207-10; discussion 1210-1; quiz 1212-3.
Clinical recommendations for repair of isolated orbital floor fractures: an evidence-based analysis.
Burnstine MA.
Doheny Eye Institute and the Department of Ophthalmology, Keck School of Medicine at the University of Southern California, 1450 San Pablo Street, DEI 4705, Los Angeles, CA 90033, USA.

目的: 学術論文内の情報の質を評価し、眼窩底だけの骨折のときの修復についてのガイドラインを提言する。
臨床的な意味: 眼窩底骨折は眼窩外傷時によく見られます。眼球陥凹、外眼筋の障害による複視、眼窩下神経知覚鈍麻を伴うことがあります。骨折修復の適応と時期については今だ論争のあるところです。
文献調査: PubMed を使用し、MEDLINE 登録論文をレビューしました。キーワード "orbital floor fracture, orbital trap-door fracture, orbital blow-out fracture" による検索を行い、1983年以降の発表論文を入手しました。眼窩底単独骨折の手術適応と時期についての意見を抽出しました。各々の推奨についてケア過程における重要度、エビデンスの程度で等級をつけました。
結果: 眼窩底骨折の治療に関して前向きランダム化臨床試験は行われていませんでした。 しかしながら、ほとんどの推奨は、患者ケアに最も重要(A) と等級化がなされ、手術治療を強く支持していました(level I)。
結論: 眼窩底骨折の手術時期と適応については、発展段階です。眼球心臓反射 oculocardiac reflex が治らない"ホワイト・アイ white-eyed" ふきぬけ骨折早期からの眼球陥凹 は迅速な手術修復の適応です。牽引試験 forced duction が陽性であり、CT検査にて眼窩軟部組織の嵌頓所見があり、複視を伴う症例、または、のちに眼球陥凹を来たす可能性のある大きな眼窩底骨折がある症例では、2週以内の手術を推奨します。

(2) 眼窩底骨折に対する数日以内の介入: ホワイト・アイふきぬけ骨折
Ophthal Plast Reconstr Surg. 1998 Nov;14(6):379-90.
Intervention within days for some orbital floor fractures: the white-eyed blowout.
Jordan DR, Allen LH, White J, Harvey J, Pashby R, Esmaeli B.
Department of Ophthalmology, University of Ottawa Eye Institute, Ontario, Canada.

眼窩底に発生したふきぬけ骨折の治療法については過去数十年にわたり論争がありました。4ヶ月から6ヶ月間の保存的治療を推奨する考え方や介入前の ‘待機と観察 wait and watch’ 期間として 2週間を推奨する考え方があります。著者は、主に16才未満の小児例ですが、眼球周囲の外傷により本疾患を来たし、上下方向の注視時の著明な眼球運動制限がありながら、軟部組織の損傷所見はわずかで、眼球陥凹がなく、放射線学的検査でも眼窩底の破裂所見はごく軽度である 複数の症例(グループ)を経験しました。2週間の経過観察は、これらの症例にとって利益はほとんどなく、眼球運動については有害となる可能性がありました。永続的な眼球運動制限を回避するために受傷後数日以内の手術を主張します。著者は、疾患単位として "ホワイト・アイ white-eyed" ふきぬけ骨折 と命名しました。

(3) 眼窩顔面骨の修復についての臨床的推奨
Curr Opin Ophthalmol. 2003 Oct;14(5):236-40.
Clinical recommendations for repair of orbital facial fractures.
Burnstine MA.
Keck School of Medicine at the University of Southern California, Los Angeles, USA.
(論文要約(1)と異なる所見についての文章のみ邦訳しました)
最近の所見: 正中部の顔面骨、外側、眼窩上壁、眼窩内壁、鼻骨篩骨の骨折の場合、外傷後早期創傷治癒機転から手術修復が困難となることを回避するため、2週間以内の手術適応があります。

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2005/04/27 at 19:00

カテゴリー: 眼窩

眼窩腫瘍レビュー 米国1264例, 日本244例

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[文献 1] 眼窩腫瘍と類似病変を有する 1264症例の調査: 2002年Montgomeryレクチャー, パート1.
Ophthalmology. 2004 May;111(5):997-1008.
Survey of 1264 patients with orbital tumors and simulating lesions: The 2002 Montgomery Lecture, part 1.
Shields JA, Shields CL, Scartozzi R.
Oncology Service, Wills Eye Hospital, Thomas Jefferson University, Philadelphia, Pennsylvania 19107, USA.

目的: 眼部腫瘍センターにて紹介受診となった症例に基づいて眼窩腫瘍の発生頻度を決定する
研究デザイン: 後向き調査法にて診察を行った症例の調査を行う。
参加者: 眼窩内占拠性病変のため、眼部腫瘍センター( ocular oncology center) にて受診した合計 1264症例。
方法: 過去30年余りの期間に眼窩腫瘤が疑われ紹介受診した1264症例について、後向きチャート(訳者注: 診療録などの)レビューを行った。病変は一般カテゴリーに分類し、個々の症例の診断は、臨床所見, CT, MRI, 病理組織学的検査に基づいて行われた(検査項目は検査可能であったもの)。年齢層別に良性および悪性腫瘍の例数および頻度 (%)も調査した。
主要な結果: 眼窩腫瘍、偽腫瘍の頻度
結果: 1264症例中、病変数と頻度について、

一般カテゴリー分類:

嚢胞性 cystic 70 cases (6%)
血管原性 vasculogenic 213 cases (17%)
末梢神経病変 peripheral nerve lesions 23 (2%)
視神経および髄膜性腫瘍 optic nerve & meningeal tumors 105 (8%)
線維細胞性病変 fibrocytic lesions 13 (1%)
骨性および線維骨性腫瘍 osseous & fibro-osseous tumors 21 (2%)
軟骨性病変 cartilaginous lesions 1 (<1%)
脂肪細胞性および混合腫様病変 lipocytic & myxoid lesions 64 (5%)
筋原性腫瘍 myogenic tumors 36 (3%)
涙腺病変 lacrimal gland lesions 114 (9%)
原発性色素細胞性病変 primary melanocytic lesions 11 (<1%)
転移性腫瘍 metastatic tumors 91 (7%)
リンパ腫および白血病性病変 lymphoma & leukemia lesions 130 (10%)
続発性眼窩腫瘍 secondary orbital tumors 142 (11%)
組織球性病変 histiocytic lesions 17 (1%)
甲状腺関連眼窩疾患 thyroid-related orbitopathy 67 cases (5%)
他の炎症性病変 other inflammatory lesions 133 (11%)
その他 miscellaneous other lesions 13 (1%).

主要な診断名:

リンパ系腫瘍 lymphoid tumor (139 cases;11%)
特発性眼窩内炎症 idiopathic orbital inflammation (135 cases; 11%)
海綿状血管腫 cavernous hemangioma (77 cases; 6%)
リンパ管腫 lymphangioma (54 cases; 4%)
髄膜腫 meningioma (53 cases; 4%)
視神経膠腫 optic nerve glioma (48 cases; 4%)
転移性乳癌 metastatic breast cancer (44 cases;4%)
脈絡膜悪性黒色腫の眼窩内進展 orbital extension of uveal melanoma (41 cases; 3%)
毛細血管腫 capillary hemangioma (36 cases;3%)
横紋筋肉腫 rhabdomyosarcoma (35 cases; 3%)
皮様脂肪腫 (成熟脂肪組織を有する類皮腫) dermolipoma (31 cases; 3%)
眼窩脂肪ヘルニア herniated orbital fat (30 cases; 2%)
皮様嚢胞 dermoid cyst (26 cases; 2%)
静脈瘤 varix (26 cases; 2%),
涙腺排出管嚢胞 dacryops (19 cases; 2%)
その他のまれな疾患

悪性、良性の頻度(1264 病変の内訳):
全年齢では、良性 810 (64%), 悪性 454 (36%)
年齢層別悪性頻度: 20% (小児 0-18 才), 27% (若年成人・中年 19-59 才), 58% (高齢者 60-92 才)
最も多い悪性腫瘍:
小児 (0-18才): 横紋筋肉腫 3% (全眼窩腫瘤中)
高齢者 (60才以上): リンパ腫 10%

結 論: いろいろな腫瘍、偽腫瘍が眼窩内に発生する。1264 病変中、良性 64%、悪性 36% であった。悪性腫瘍の頻度は年齢とともに増加し、高齢者 (60才以上)では、より高齢者のリンパ腫と転移性腫瘍の増加とともに、悪性腫瘍の頻度は良性を上回った。

[他の解説ページ:発生頻度の高い眼窩腫瘍について]
eMedicine – Tumors, Orbital
    http://www.emedicine.com/oph/topic758.htm
Author: Michael Mercandetti, Surgery, Doctors Hospital of Sarasota

Top 3 pediatric tumors are dermoid cysts, capillary hemangiomas, and rhabdomyosarcoma.
小児でのトップ3: 皮様嚢胞, 毛細血管腫, 横紋筋肉腫

Top 3 adult tumors are lymphoid tumors, cavernous hemangiomas, and meningiomas.
成人でのトップ3: リンパ系腫瘍, 海綿状血管腫, 髄膜腫

[追加エントリー 2005/5/29: 文献 2]
21年間に日本人患者にみられた眼窩腫瘍 244腫瘍のレビュー: 原発部位と存在部位.
Jpn J Ophthalmol. 2005 Jan-Feb;49(1):49-55.
A review of 244 orbital tumors in Japanese patients during a 21-year period: origins and locations.
Ohtsuka K, Hashimoto M, Suzuki Y.
Department of Ophthalmology, Sapporo Medical University School of Medicine, Sapporo 060-8543, Japan.

目的: 患者年齢分布、病理、腫瘍原発部位や存在部位を確定するために眼窩腫瘍 244症例をレビューする。
方法: 1981年から2002年の期間、自施設における組織病理学的または放射線学的に確かめられた眼窩腫瘍例をレビューし、患者年齢、病理、腫瘍原発部位、眼窩内の腫瘍部位を調査した。連続したレビュー症例 244例は、年齢 0歳から 90歳、平均年齢 48.7歳、男性 114例、女性 130例であった。
結果: 244症例中、213症例 (89%) は原発性眼窩腫瘍、23症例 (9%) は隣接部位に発生した続発性腫瘍、 8症例 (2%) は転移性腫瘍であった。眼窩内の腫瘍部位に関しては、122腫瘍 (50%) は筋円錐外、36腫瘍 (15%) は筋円錐内であり、86腫瘍 (35%) は涙腺部位であった。主な腫瘍は、
筋円錐外では、
反応性リンパ系過形成 reactive lymphoid hyperplasia (22%)
悪性リンパ腫 malignant lymphoma (20%);

筋円錐内では、
海綿状血管腫 cavernous hemangioma (25%)
視神経の神経膠腫 optic nerve glioma (14%)
視神経鞘の髄膜腫 optic nerve sheath meningioma (14%);

涙腺部位では、
悪性リンパ腫 malignant lymphoma (40%)
多形性腺腫 pleomorphic adenoma (24%)
であった。
244症例の年齢分布をみると、0歳から 9歳、60歳から69歳に2つのピークがあった。
0歳から 9歳までの患児では、
類皮嚢胞 dermoid cyst (26%)
視神経の神経膠腫 optic nerve glioma (11%)
毛細血管腫 capillary hemangioma (11%)
出血性リンパ管腫 hemorrhagic lymphangioma (11%)
が多かった。
一方、40歳以上の患者では、
悪性リンパ腫 malignant lymphoma (31%)
眼窩偽腫瘍 orbital pseudotumor (24%)
多形性腺腫 pleomorphic adenoma (10%)
海綿状血管腫 cavernous hemangioma (9%)
が多かった。
結論: 眼窩腫瘍の病理学的プロフィールは、患者年齢、眼窩内の腫瘍部位によって特徴があった。発症時年齢、腫瘍部位、放射線学的所見は、生検、腫瘍切除前の腫瘍診断や治療戦略を決定するために重要な情報を提供する。

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2004/11/06 at 13:19

カテゴリー: 眼窩

眼窩内血管腫

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視神経の近くに発生する成人・眼窩内海綿状血管腫 2論文の抄訳です.
イタリアからの症例報告です(血管腫13例)。症状自覚から医療機関受診まで:2ヶ月から6年。症状:眼球突出 84.6% 視力低下(ないし複視) 77% 眼痛・頭痛 38.4% 視神経が萎縮している症例なし。
手術例13症例(1例は偶然検査で発見されたため自覚症状はなかったが、検査上徐々に増大したため手術を希望)。全例、開頭術によるアプローチを選択し、完全摘出成功。腫瘍の大きさ:直径約1.5~3.5cm。術中・術後合併症なし(術後1~6年経過観察中) 再発なし。結果:[良好]10例(視力、眼球運動は正常、頭痛なし、眼球突出は著明に改善ないし消失)[ほぼ良好]2例(視力・視野障害は回復しなかったが、眼球突出は改善した)[悪化]1例は、術後6ヶ月目に網膜の血行障害を来たし視力は低下した。一般的に、徐々に大きくなり、周囲組織を圧迫したり、眼球が押し出されます。ある年齢以降に進行を停止した症例、症状が出現しないケースもあり、妊娠中に病状が進行することもあります。女性61%以上、50歳代に多いことから、内分泌ホルモン(女性ホルモン)の影響が考えられています。手術による血管・組織侵襲により、視力が低下したり、まぶたが下垂することも報告されています。手術時、完全摘出が望まれますが、部分切除であっても症状は改善し、再発はまれであるとのことです。脳内にできる血管腫とは異なり、腫瘍内に出血することはないので、急激な増大はない。手術に際して、腫瘍の位置から最も切除しやすいアプローチ方法を推奨しています。放射線治療は無効です。また、乳幼児の瞼などにできる血管腫(自然縮小する異なる組織型)では、大きくなり弱視のリスクが発生すると、ステロイド剤を局所注射しますが、本腫瘍では無効です。
[文献]
Acciarri N, Giulioni M, Padovani R, Gaist G, Pozzati E, Acciarri R. Orbital cavernous angiomas: surgical experience on a series of 13 cases. J Neurosurg Sci 1995;39:203-9.

別論文、66症例の検討(米国)では、手術時のアプローチは全例、眼窩側(前方ないし外側アプローチ)です。周囲健常組織からの剥離は容易で、完全摘出例がほとんどです(部分切除は2例のみ)。術後平均10年の経過観察中、再発例1例のみ(完全摘出)で、術後15年目に再手術し、その後25年は再発していません。
主症状はイタリアの報告例同様、眼球突出72%です。進行度に個人差が大きいのですが、平均すると1年当たり2mm 眼球が前方に突出したことになります。
[文献]
Harris GJ, Jakobiec FA. Cavernous hemangioma of the orbit. J Neurosurg 51:219-228, 1979.

合計79症例となりますが、視神経に接するような位置にあることがほとんどですので、「近いから失明する手術リスクが大きい」という主治医の説明は論文とは矛盾します。

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2004/02/17 at 20:08

カテゴリー: 眼窩