evidence-based medicine

Archive for 1月 2006

コンタクトレンズによる角膜変形

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コンタクトレンズ起因性角膜変形 contact lens-induced corneal warpage は、下記の Schornack M.の発表を引用するまでもなく、旧タイプの PMMA素材ハードレンズで最も高頻度にみられますが、角膜変形の報告例の約 27%は ハイドロゲル・ソフトコンタクトレンズで発生しているとのことです。
warpage とは、英語辞書によると、板の"反り"のことで、corneal warpage は"角膜変形"と訳されることが多いようです。ハイドロゲルレンズとは、含水性の(現在、主流の)ソフトレンズ です。
角膜変形の有無は、特に、屈折矯正角膜手術 keratorefractive surgery に際して手術成績に関係する重要な問題ですが、眼科日常診療においても眼科医は、その諸症状・所見、発生頻度、回復時期などについての知識が必要です。
Cont Lens Anterior Eye. 2003 Sep;26(3):153-9.
Hydrogel contact lens-induced corneal warpage.
Schornack M.
Department of Ophthalmology, Mayo Clinic, 200 First Street SW, Rochester, MN 55905, USA.

BACKGROUND: Although contact lens-induced corneal warpage is most frequently associated with PMMA lenses, approximately 27% of reported cases of corneal warpage have been attributed to hydrogel lens wear. ………… Clinical signs of corneal warpage include changes in refractive error, decreased visual acuity with spectacle correction, and changes in corneal topography.…………

[要約の抄訳]
屈折異常(値)が変化したり、眼鏡使用時の視力が低下したり、角膜トポグラフィ (角膜形状解析法) の変化を来たします。
角膜形状変化の原因 (可能性)
(1) 機械的変形
(2) 慢性的な代謝障害: 一部のハイドロゲルレンズでは酸素透過率の制約のため慢性低酸素状態 chronic hypoxia とアシドーシス acidosisを来たす可能性があり、角膜生理学の変化が臨床的に有意な角膜変形を起こす。
(3) 両方

屈折矯正手術前のコンタクトレンズ起因性角膜変形の解消までの期間
CLAO J. 2002 Oct;28(4):169-71.
Time to resolution of contact lens-induced corneal warpage prior to refractive surgery.
Wang X, McCulley JP, Bowman RW, Cavanagh HD.
Department of Ophthalmology, The University of Texas Southwestern Medical Center at Dallas, 75390-9057, USA.
[要約の邦訳]
目的: 屈折矯正角膜手術前のコンタクトレンズ起因性角膜変形の解消について評価する。
方法: 著者らは屈折矯正角膜手術評価を目的としたコンタクトレンズ装用患者で連続症例 165眼に対して前向き調査を行った。有意な (significant) コンタクトレンズ起因性角膜変形は、角膜トポグラフィ検査にて 11症例 20眼で検出された。顕性屈折検査、ケラトメトリー (角膜曲率測定)、角膜トポグラフィを週毎または隔週毎の再評価の期間中、続けて記録し、安定性について以前の測定結果と比較した。年齢、性別、コンタクトレンズ・タイプ、コンタクトレンズ装用期間の影響、安定化する回復までの期間を解析した。
結果: 有意なコンタクトレンズ起因性角膜変形の頻度は全体として 12%であった。レンズに関連する変形がみられた患者では、コンタクトレンズ装用歴は平均 21.2年 (範囲 10年から 30年)であった; 終日装用 (デイリー)ソフト (n=2), 連続装用ソフト (n=6), 乱視用(トーリック) (n=4), 酸素透過性ハード (n=8)。有意なトポグラフィ・パターンの差を伴う屈折度数 3.0ジオプター (D), ケラトメトリー値 2.5Dまでのシフトが観察された。屈折検査値、ケラトメトリー値 (変化 +/- 0.5D以内)、トポグラフィ・パターンが安定する平均回復時間は 7.8+/-6.7 週 (範囲 1週 から 20週)であった。回復速度はレンズタイプ間で異なった: 連続装用ソフト 11.6+/-8.5週, 乱視用 (トーリック)ソフト 5.5+/-4.9週, 終日装用 (デイリー)ソフト 2.5+/-2.1 週, 酸素透過性ハード 8.8+/-6.8 週であった。
結論 著者らは屈折矯正角膜手術の評価を行った患者の 12% において、有意なコンタクトレンズ起因性角膜変形を観察した。変形はすべてのコンタクトレンズ・タイプで発生したが、変形が解消する速度は異なっていた。屈折矯正角膜手術手技の質と予見可能性を最適化するために、コンタクトレンズ起因性角膜変形の安定化に際して適切な待機期間が必要である。屈折矯正角膜手術の患者スケジュール調整前に、顕性屈折検査、ケラトメトリー、角膜トポグラフィ・パターンが連続し安定することにより角膜変形の解消が実証されることを著者らは提言する。

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2006/01/30 at 16:15

カテゴリー: 角膜

脈絡膜血管新生とPDT治療

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英語論文「若年成人の特発性および炎症性脈絡膜血管新生に対するPDT治療」の要約をお伝えします(本エントリー下段)。
さて、文献上、原因不明の脈絡膜新生血管は、特発性脈絡膜血管新生 idiopathic choroidal neovascularization とよぶことが多いようです。また、黄斑部病変を伴うとき、通常「中心窩下脈絡膜血管新生」などのように病変部位を明確に表示します (時に 特発性新生血管黄斑症 idiopathic neovascular maculopathyなどの医学用語となります)。
脈絡膜血管新生の下記原因リストの中で ■の付いた病気は、光線力学療法 photodynamic therapy (PDT) の治療報告があるものです。
ただし、 「特発性 idiopathic」と Cleasby GW.の報告(1976年) した「特発性限局性網膜下新生血管」
   » http://www.qqiac.com/2006/01/post_6859.html
と同義語であるか否か? 投稿者自らの判断はいたしません。
参照ページ: 脈絡膜血管新生の同義語と原因
   eMedicine – Neovascularization, Choroidal : Article by Lihteh Wu, MD
   » http://www.emedicine.com/oph/topic534.htm
Last Updated: March 11, 2005

同義語: choroidal neovascularization, choroidal NV, CNV, subretinal neovascularization
………
原因 Causes: Virtually any pathologic process that involves the RPE and damages the Bruch membrane can be complicated by CNV.

Degenerative conditions 変性
■ Age-related macular degeneration 加齢黄斑変性(症)
■ ARMD 加齢黄斑変性(症)
■ Myopia 近視
■ Angioid streaks 血管線条
Inflammatory or infectious conditions 炎症または感染症
■ Histoplasmosis ヒストプラスマ症
Sarcoidosis サルコイドーシス
Multifocal choroiditis
■ Punctate inner choroidopathy PIC
Choroidal tumors 脈絡膜腫瘍
Nevi 母斑
Melanoma 黒色腫
Hemangioma 血管腫
Osteoma 骨腫
Trauma 外傷
Choroidal rupture 脈絡膜破裂
Laser photocoagulation レーザー光凝固
■ Idiopathic 特発性

若年成人の特発性および炎症性脈絡膜血管新生に対するPDT治療
Ophthalmology. 2003 Jul;110(7):1315-20.
Photodynamic therapy of idiopathic and inflammatory choroidal neovascularization in young adults.
Rogers AH, Duker JS, Nichols N, Baker BJ.
New England Eye Center, Tufts University School of Medicine, 750 Washington Street, Boston, MA 02111, USA.
[要約の邦訳]
目的: 若年成人の中心窩下脈絡膜血管新生に対するベルテポルフィン verteporfin (商品名 ビスダイン Visudyne; Novartis, Duluth, GA)を使用する光線力学療法 photodynamic therapy (PDT) を評価する。
デザイン: 後向き非比較介入研究による症例調査。
参加者: 加齢黄斑変性(症) age-related macular degeneration, 血管線条 angioid streaks, 近視 myopia に続発した脈絡膜血管新生 (CNV)発症眼を除く、典型的タイプ classic の中心窩CNV 17症例 19眼に対して、ベルテポルフィンを使用する PDT治療を行った。主な転帰の測定法: PDT前・後のスネレン (Snellen)視力。
結果: 19眼に対してPDT後、平均 12.8か月 (範囲 4-33か月)の追跡調査を行った。
治療前、視力は 20/40(0.5[注])以上 0 眼 (0.0%), 20/40(0.5)未満から 20/200(0.1)超 11 眼 (57.9%), 20/200(0.1)以下 8 眼 (42.1%)であった。
治療後、視力は 20/40(0.5[注])以上 4 眼 (21.1%), 20/40(0.5)未満から 20/200(0.1)超 8 眼 (42.1%), 20/200(0.1)以下 7 眼 (36.8%)であった。
6 眼 (31.6%)は再治療を受けたが、2回の治療は 2眼のみに行われた。4 眼では PDT後に最終的に CNVの外科的摘出手術が行われた。
結論: PDTは原因不明(特発性)および炎症原因による中心窩下脈絡膜血管新生を来たした若年成人症例の視力を安定および改善するために有用であるようです。

訳者注: ( )内の視力は、分数視力(Snellen)を日本で一般的な国際標準小数視力表示に訳者が換算したものです。

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2006/01/28 at 10:29

カテゴリー: 血管新生

特発性網膜下新生血管の自然経過

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海外では、加齢黄斑変性、病的近視のほか、眼ヒストプラスマ症候群 (ocular histoplasmosis syndrome OHS) 、血管線条、特発性 (原因不明のこと)による脈絡膜血管新生についても、ベルテポルフィン光線力学療法 PDT (ocular photodynamic therapy with verteporfin) の有用性が報告されています。
しかし、若年者に多い下記の「特発性中心窩下脈絡膜血管新生」 「特発性限局性網膜下新生血管」症例では、必ずしも自然経過が不良ということではありませんので、誤解が生じないよう論文要約をお伝えいたします。

(1) 特発性中心窩下脈絡膜血管新生の自然経過
Ophthalmology. 1995 May;102(5):782-9.
The natural history of idiopathic subfoveal choroidal neovascularization.
Ho AC, Yannuzzi LA, Pisicano K, DeRosa J.
Vitreoretinal Service, University of Pennsylvania, Scheie Eye Institute 19104, USA.
[要約の邦訳]
目的: 若年患者の特発性中心窩下脈絡膜血管新生 (idiopathic subfoveal choroidal neovascularization CNV) の長期自然経過を調査研究する。
方法: 診療所 1施設と都市部の眼科病院 1施設にて特発性中心窩下脈絡膜血管新生と診断された 19連続症例の後向き調査。
結果: 特発性脈絡膜血管新生が見られた 87連続症例のうち 23症例 (26%)は、中心窩下の脈絡膜血管新生 CNV を呈した。中心窩下病変を有する 19症例は 中央値 87か月 (範囲, 5-230か月)の追跡調査がなされていた。初回の検査時、最高矯正スネレン (Snellen)視力の中央値は 20/100 [ 0.2] (範囲, 20/40[0.5]-指数弁); 最終検査時, 視力の中央値は 20/70 [0.285 およそ 0.3] (範囲, 20/20[1.0]-指数弁)であった。95%の患者の視力は安定するか有意に改善したが、一方 5%の患者のみ視力は有意に低下した。CNV のサイズが長期的な最終視力に関連する唯一の変数であった。初回の蛍光眼底血管造影を行った時、1×視神経乳頭面積 disc area 以下の病変は、より大きい病変に比べて最終視力 20/60 [0.33, およそ 0.3]以上と関連しやすく、最終視力 20/200 [0.1]以下と関連する可能性は低かった (P = 0.038)。これらの結果はロジスティック回帰分析にて確認された (P = 0.027)。経過観察中、他眼には発症していなかった。
結論: 特発性中心窩下脈絡膜血管新生は必ずしも重度の視力低下を来たすわけではない。このタイプの中心窩下病変に対する治療は良好な自然経過の可能性を考慮すべきである。

: [ ]内の視力は、分数視力(Snellen)を日本で一般的な国際標準小数視力表示に訳者が換算したものです。

(2) 特発性限局性網膜下新生血管
Am J Ophthalmol. 1976 May;81(5):590-9.
Idiopathic focal subretinal neovascularization.
Cleasby GW.
[要約の邦訳]
20症例において、「特発性限局性網膜下新生血管」は中心窩網膜または中心窩近傍に生ずる網膜下新生血管の孤立病巣 solitary focusで、病巣を覆っている感覚網膜(神経上皮)および病巣に接している神経上皮の漿液性剥離ないし出血性剥離、または両方を伴うことが特徴であった。その病変は、推定眼ヒストプラスマ症候群 presumed ocular histoplasmosis syndrome に見られる新生血管板(膜)に類似していたが、本症候群の診断に絶対必要であるといわれている他の特徴的な随伴眼所見はなかった。この症例グループでは、ヒストプラズミン皮膚試験 histoplasmin skin test の陽性頻度は一般住民と同じ程度であった。20症例の中で、2名は両眼性であった。全例で患眼や他眼にそれ以外の病変はなかった。本疾患は、その期間は一定ではないが、自己限定的 self-limited ()である, しかし、中心視力低下を伴う広範な瘢痕を来たす可能性がある。

注:「self-limited」 » スペースアルク:英辞郎
"治療をしないでも長期的には症状が落ち着いたり収まる性質のある"

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2006/01/27 at 11:58

カテゴリー: 血管新生

selective laser trabeculoplasty SLT

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Q-switched 532-nm Nd:YAG laser によるレーザー線維柱帯形成術は使用レーザーのパラメーター(条件)から、従来のアルゴンレーザー線維柱帯形成術 (argon laser trabeculoplasty ALT)のように線維柱帯の構造ないし無色素細胞に凝固障害を来たすことなく、選択的に線維柱帯の色素細胞を標的にできるので、 SLT (selective laser trabeculoplasty)とも呼ばれます。
このエントリーでは、仮に「選択的レーザー線維柱帯形成術」とさせていただきます。SLTの治療成功率は、治療方法だけでなく、医療機関によっても異なることを中心にお伝えします。日本の医療施設からの報告は、残念ながらランダム化試験ではありませんでしたが、参考のため全て (PubMed では 2施設だけヒット)の論文タイトルを掲載いたしました。

Latina MAらの下記論文 (1998年)が SLT 法開発初期の臨床成績のようです。眼圧コントロール不能の開放隅角緑内障 (以前にALTを施行された治療群と同治療歴のない群) 合計 53症例 53眼を対象とした臨床試験でした。
Ophthalmology. 1998 Nov;105(11):2082-8; discussion 2089-90.
Q-switched 532-nm Nd:YAG laser trabeculoplasty (selective laser trabeculoplasty): a multicenter, pilot, clinical study.
Latina MA, Sibayan SA, Shin DH, Noecker RJ, Marcellino G. Wellman Laboratories of Photomedicine, Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School, Boston, USA.
[要約の目的・方法のみ引用]
開放隅角緑内障患者を対象とした予備的な非ランダム化、前向き臨床試験が多施設で行われました。レーザー装置 Coherent Selecta 7000 (Coherent, Inc, Palo Alto, CA) frequency-doubled q-switched Nd:YAG laser (532 nm) にて、隅角部線維柱帯の 180° の範囲に重ならないように約50個のレーザー照射が行われ、エネルギー量は1パルス当たり 0.6 から 1.2 mJでした。

PubMed にてキーワード検索「selective laser trabeculoplasty」を行うと、その後、総説を含めて40編余りの論文がヒットしました。ランダム化前向き臨床試験の中に、SLTの照射範囲とラタノプロスト点眼液との効果を比較した成績がありますので、要約の一部をお知らせします。
Br J Ophthalmol. 2005 Nov;89(11):1413-7.
A randomised, prospective study comparing selective laser trabeculoplasty with latanoprost for the control of intraocular pressure in ocular hypertension and open angle glaucoma.
Nagar M, Ogunyomade A, O’Brart DP, Howes F, Marshall J. Department of Ophthalmology, St Thomas’s Hospital, Lambeth Palace Road, London SE1 7EH, UK.
目的: 高眼圧症 (ocular hypertension OHT)と開放隅角緑内障 (OAG)に対する selective laser trabeculoplasty 90°, 180°, 360°, 532 nm Nd:YAG laser)の眼圧コントロール効果を ラタノプロスト latanoprost 0.005%と比較する。治療後平均 10.3か月の追跡調査により、

CONCLUSIONS: Success rates were higher with latanoprost 0.005% at night than with 90 degrees and 180 degrees SLT treatments. 90 degrees SLT is generally not effective. 360 degrees SLT appears to be an effective treatment with approximately 60% of eyes achieving an IOP reduction of 30% or more.

SLT照射部が 90度または180度であれば、ラタノプロスト 0.005% (訳者注: 商品名 キサラタン点眼液など)夕方点眼の方が治療成功率は優れていた。SLT 90度は一般的に有効ではなかった。360度の照射であれば、約 60%の治療眼で 30%以上の眼圧下降が得られ、有効な治療です。
[他に、結果の一部を引用します]

Although success rates were better with 360 degrees than 180 degrees SLT treatments, differences did not reach statistical significance. ……… Differences in success rates between latanoprost and 360 degrees SLT did not reach statistical significance (p<0.5).

180度 SLTに比べて、360度 SLTの成功率は良かったが、統計的な有意差はなかった。・・・中略・・・ ラタノプロストと360度 SLTの成功率には統計的な有意差はなかった(p<0.5)。

しかし、三次医療機関 tertiary care referral center にて5名の医師によって行われた SLT治療 計 94症例 94眼 (90%は 180°SLT) の後向き研究では、180度 SLTの不成功率が高いと指摘されています。
J Glaucoma. 2005 Oct;14(5):400-8.
High failure rate associated with 180 degrees selective laser trabeculoplasty.
Song J, Lee PP, Epstein DL, Stinnett SS, Herndon LW Jr, Asrani SG, Allingham RR, Challa P.
Department of Ophthalmology, Duke University Medical Center, Durham, North Carolina NC 27710, USA.
[SLT失敗の定義と結果]

Selective laser trabeculoplasty failure was defined in two ways: (1) IOP decrease <3 mm Hg (definition one), or (2) IOP decrease <20% (definition two), on two successive visits > or =4 weeks after SLT. ………
RESULTS: Overall failure rates were 68% (64/94) and 75% (70/94) (by definitions one and two, respectively). By survival/life-table analysis, mean time to failure was 6 months and 5.5 months, by definitions one and two, respectively. By the end of the study (14.5 months), the failure rates were 86% and 92% by definitions one and two, respectively.

SLT不成功は治療後、4週以降の連続2回の診察時に (1)眼圧降下 3mmHg未満 (定義 1)または (2)眼圧下降率 20%未満 (定義 2) と定義した。………全体の不成功率は、定義 1で 68% (64/94)、定義 2で 75% (70/94)でした。生存/生命表分析では、失敗にいたるまでの平均期間は 6か月、5.5か月(それぞれ、定義1, 定義2)でした。調査終了時 (14.5 か月)までには、不成功率は、定義 1で 86% 、定義 2で 92% となりました。

【日本の医療施設報告】
selective laser trabeculoplasty の臨床成績
Nippon Ganka Gakkai Zasshi. 1999 Aug;103(8):612-6.
Clinical results of selective laser trabeculoplasty Kano K, Kuwayama Y, Mizoue S, Ito N.
Department of Ophthalmology, Osaka Koseinenkin Hospital, Japan.
[要約の一部を抄訳しました]
対象・方法: 眼圧コントロールできない開放隅角緑内障 67症例 67眼に対して、レーザー装置 Coherent Selecta 7000 (Coherent Inc., Palo Alto, CA) にて Selective laser trabeculoplasty (SLT) を施行した。67症例中 19例は以前にアルゴンレーザー線維柱帯形成術 (argon laser trabeculoplasty ALT)を受けていた。線維柱帯 180°に重ならないように合計約 60個のレーザーを照射した。1パルス当たりのエネルギーは 0.5から 1.0mJであった。気泡形成が起こらない最大エネルギーレベルを選択した。
結果: 術前の平均眼圧は 22.4 mmHgであった。治療 6ヶ月後、平均 4.4 mmHgの眼圧降下が得られ、outflow pressure (OP) 下降率は平均 38.1%であった。治療 1か月後、68.7%の症例の OP下降率は少なくとも 20% ("responders")であった。5mmHg以上の一過性眼圧上昇は、25.4%の症例にみられた。治療 6ヶ月後の成功率は、全症例 (67眼)では 64.6%、responders (46眼)では、78.2%であった。Cox 比例ハザードモデルを用いた解析によると、術前眼圧が低いことが手術成功の有意な決定要因であり、5mmHg の眼圧上昇の危険率は 2.12であった。年齢、性別、ALTの既往歴、隅角の色素などの他の因子は手術成功との有意な関連性はなかった。
結論: SLTは安全で有効な眼圧降下法の1つであると思われる。

selective laser trabeculoplasty の臨床成績
Nippon Ganka Gakkai Zasshi. 2000 Mar;104(3):160-4.
Clinical results of selective laser trabeculoplasty
Kajiya S, Hayakawa K, Sawaguchi S.
Department of Ophthalmology, University of Ryukyu Faculty of Medicine, Okinawa, Japan.
[要約の一部を抄訳しました]
原発性開放隅角緑内障 10症例 17眼と水晶体嚢性緑内障 1症例 1眼を対象とした。
方法: 10か月までの追跡調査を行った。平均エネルギー 28.14mJ (0.47 mJ x 59個)で、前房隅角半周の線維柱帯色素部に照射した。
結果: 術前平均眼圧は 22.8 mmHg で、術後平均眼圧は、8.6, 17.3, 16.1 mmHgと有意に低下した (それぞれ、治療 1, 3, 6 か月後)。最大眼圧降下量は平均 8.8 (3-18)mmHgであった。一過性眼圧上昇を来たした 11眼中、6眼は 6 mmHg以上の上昇であった (訳者注: Jpn J Ophthalmol. の同著者論文要約では 7mmHg以上と記載されています)。注目すべき術後合併症はなかった。
結論: SLTは原発開放隅角緑内障や水晶体嚢性緑内障などの開放隅角緑内障に対して安全で効果的な治療法の1つである。

Jpn J Ophthalmol. 2000 Sep 1;44(5):574-575.
Clinical Results of Selective Laser Trabeculoplasty.
Kajiya S, Hayakawa K, Sawaguchi S.
Department of Ophthalmology, University of Ryukyu Faculty of Medicine, Ryukyu, Japan
[上記論文とは、雑誌名が異なるだけです。論文内容の変更点の有無不詳]

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2006/01/18 at 19:14

カテゴリー: 緑内障

急性視神経炎と副腎皮質ステロイド薬

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The Optic Neuritis Study Group (視神経炎研究班)が 1992年、医学雑誌 New England Journal of Medicine ニュー イングランド ジャーナル オブ メディスン に発表した
「急性視神経炎治療におけるコルチコステロイド薬のランダム化比較臨床試験」
文献[1] N Engl J Med. 1992 Feb 27;326(9):581-8.
A randomized, controlled trial of corticosteroids in the treatment of acute optic neuritis. The Optic Neuritis Study Group.
Beck RW, Cleary PA, Anderson MM Jr, Keltner JL, Shults WT, Kaufman DI, Buckley EG, Corbett JJ, Kupersmith MJ, Miller NR, et al.
Department of Ophthalmology, University of South Florida College of Medicine, Tampa 33612.

の結果により、その後の急性視神経炎WHO 国際疾病分類 International Classification of Diseases ICD-10H46 治療は大きく変わりました (Trobe JDらのアンケート調査結果 文献[3] もご覧下さい)。
457症例の急性視神経炎患者は無作為にプラセボ対照群を含む3群に分かれて、下記の治療(1, 2, 3)を受け、視力等の視機能、視神経炎の再発回数について6ヶ月以上の追跡調査が行われました。
(1) メチルプレドニゾロン静脈注射 (静脈注射 1g/日×3日間, その後 プレドニゾン prednisone 内服 1mg/体重Kg/日×11日. 訳者注: Intravenous [IV] methylprednisolone, 大量静脈投与法, パルス治療法ともよばれます)
(2) プレドニゾン 内服 (1mg/体重Kg/日×14日)
(3) 偽薬内服 (14日間)

同時期に日本国内においても、急性特発性視神経炎 計66症例を対象としたランダム化比較試験が実施されています。研究班名は 「ONMRG」とよばれ、メチルプレドニゾロン静脈内大量投与群と実薬対照群(ビタミン剤 メコバラミン mecobalamin) の治療経過が比較され、8年後に英文雑誌 Jpn J Ophthalmol に掲載されました。
文献[2] Jpn J Ophthalmol. 1999 Mar-Apr;43(2):133-8.
A randomized, controlled clinical trial was conducted in 1991 to compare an intravenous megadose of methylprednisolone with a control drug (mecobalamin) for treating acute idiopathic optic neuritis.
Wakakura M, Mashimo K, Oono S, Matsui Y, Tabuchi A, Kani K, Shikishima K, Kawai K, Nakao Y, Tazawa Y, Kiyosawa M, Abe H, Ohba N, Yago K, Maeda S, Sugita M, Ishikawa S. Related Articles, Links Multicenter clinical trial for evaluating methylprednisolone pulse treatment of idiopathic optic neuritis in Japan.
Optic Neuritis Treatment Trial Multicenter Cooperative Research Group (ONMRG)
.

文献[3] Ophthalmology. 1999 Nov;106(11):2047-53.
The impact of the optic neuritis treatment trial on the practices of ophthalmologists and neurologists.
Trobe JD, Sieving PC, Guire KE, Fendrick AM.
Department of Ophthalmology, W.K. Kellogg Eye Center, School of Medicine, University of Michigan, Ann Arbor 48105, USA.

Following the ONTT reports, nearly all ophthalmologists and neurologists have reduced their use of oral prednisone alone, substituting a regimen that includes intravenous methylprednisolone.

視神経炎治療研究 (ONTT)の報告以降、ほぼすべての眼科医と神経科医はプレドニゾン内服薬の単独投与法を減らし、メチルプレドニゾロン静脈注射などの投薬計画を代替で行っている。

多発性硬化症 multiple sclerosis と視神経炎に対するステロイド治療の無作為比較化臨床試験結果を収集し、メタ分析が行われました (Brusaferri Fら, 2000年).
文献[4] J Neurol. 2000 Jun;247(6):435-42.
Steroids for multiple sclerosis and optic neuritis: a meta-analysis of randomized controlled clinical trials.
Brusaferri F, Candelise L.
Divisione di Neurologia, Ospedale Maggiore di Crema, Italy.

多発性硬化症 998 症例, 視神経炎 716 症例, 合計 1714例の解析により、

We found that corticosteroids or ACTH produced a significant improvement in disability or visual acuity at 30 days (odds ratio 0.49; 95% CI 0.37-0.64). The improvement was not statistically significant at longer follow-up (0.85; 95% CI 0.67-1.09). The treatment did not significantly reduce the number of patients with relapses (0.74; 95% CI 0.54-1.01).

コルチコステロイド, または ACTH (副腎皮質刺激ホルモン)は、治療後30日時点の視力や障害を有意に改善した (オッズ比 0.49; 95%信頼区間 0.37-0.64)。より長期の追跡調査では、これらの改善は統計的に有意ではなかった (オッズ比 0.85; 95%信頼区間 0.67-1.09)。治療後も再発症例数は有意に減少しなかった (オッズ比 0.74; 95%信頼区間 0.54-1.01)。

ただし、再発のリスクとステロイド用量・投与法との関連性については、対象サブグループ間のメタ分析では十分な差異がみられていないようです。 文献[1] の結果の一部として、

The outcome in the oral-prednisone group did not differ from that in the placebo group. In addition, the rate of new episodes of optic neuritis in either eye was higher in the group receiving oral prednisone, but not the group receiving intravenous methylprednisolone, than in the placebo group (relative risk for oral prednisone vs. placebo, 1.79; 95 percent confidence interval, 1.08 to 2.95).

どちらかの目に視神経炎が再発する率は対照群に比べて、プレドニゾン内服治療群で高く、メチルプレドニゾロン静脈注射群では高くなかった (相対危険度 プレドニゾン内服 vs. プラセボ, 1.79; 95%信頼区間 1.08-2.95)。

多発性硬化症や視神経炎の患者に対して、プレドニゾ(ロ)ン内服単独治療を行うことは再発率増加のリスクとなる(ため推奨できない)との著者結論がみられる他の論文・総説を引用します。

文献[5] Rev Neurol (Paris). 2001 Sep;157(8-9 Pt 2):988-95.
Therapeutic indications for acute episodes of multiple sclerosis.
Brochet B.
Federation des Neurosciences Cliniques, Hopital Pellegrin, CHU de Bordeaux & Laboratoire de Neurobiologie des Affections de la Myeline (EA 2966), Universite Victor Segalen, Bordeaux.
文献[6] Semin Ophthalmol. 2002 Mar;17(1):4-10.
Treatment of acute demyelinating optic neuritis.
Balcer LJ, Galetta SL.
Division of Neuro-Ophthalmology, Department of Neurology, University of Pennsylvania School of Medicine, 3400 Spruce Street, Philadelphia, PA 19104, USA.

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2006/01/16 at 00:02

カテゴリー: 視神経

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【ICD-10】
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   「病的近視のベルテポルフィン治療-2年-VIPレポート」
   » http://www.qqiac.com/2005/11/2vip_4fce.html
エントリー(解説)   「国際疾病分類 ICD-10と日本語病名」
   » http://www.medqa.jp/2005/12/_icd10_205f.html

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2006/01/12 at 16:19

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なお、旧エントリのURLでは、「リンク切れ」となりますので、ご了承下さい。病名検索にてキーワードがヒットしないとき、2005年12月25日までのエントリーについては「旧ブログ」をご利用下さい。
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2006/01/11 at 09:56