evidence-based medicine

角膜炎と抗炎症薬

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抗炎症薬の疼痛緩和作用や病巣・創傷の治癒効果に関する話題ではなく、感染による炎症時の問題点です。外眼部 (角膜、結膜、眼瞼) の炎症性疾患の中には、その原因が感染症(細菌, ウイルスなど)であるか、非感染性のものであるか、初回診察時には診断の難しいケースがあります。たとえば、コンタクトレンズ装用者の角膜に混濁が出現した場合、"無菌性角膜浸潤 sterile corneal infiltrates " であるか、感染性のものであるか、臨床症状・所見から総合判断します。細菌培養検査などを行っても、検査結果がわかるまで数日を要します。初回診察から培養結果判明までの数日間が「経験的な治療」期間となります。
「無菌性角膜浸潤」であれば、副腎皮質ステロイド点眼液が著効するでしょうが、ステロイドホルモンは局所・全身免疫能を低下させますので、万一、細菌やウイルス感染症による角膜病変であれば、病状は悪化します。特に、抗菌薬や抗ウイルス薬中止(中断)後も副腎皮質ステロイドが継続されたときに、感染症が再燃(再発)することがあります。
動物モデルにおける抗炎症治療併用時の細菌性角膜炎の再発
Cornea. 1992 Sep;11(5):404-8.
Recurrence of microbial keratitis concomitant with antiinflammatory treatment in an animal model.
Gritz DC, Kwitko S, Trousdale MD, Gonzalez VH, McDonnell PJ.
Doheny Eye Institute, Los Angeles, CA 90033.
[要約の邦訳]
糖質コルチコステロイド治療中に緑膿菌性角膜炎が再発したとの症例報告がみられる。家兎眼に緑膿菌または肺炎球菌による角膜炎を発症させて、抗菌薬治療を行った。他点眼液として、賦形剤, 酢酸メチルプレドニゾロン, フルルビプロフェン flurbiprofen, ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA) を使用した。7日後に行った全ての細菌培養検査は陰性であり、抗菌薬を中止した。2週後、緑膿菌性角膜炎は、ステロイド治療眼 7眼中 6眼 (85.7%)で再発した。他の治療薬での再発は flurbiprofen 治療眼 1/8 (12.5%), NDGA 治療眼 1/8 (12.5%), 賦形剤のみ 0/8 (0%) であった。肺炎球菌を感染させた家兎眼 31眼では再発はなかった。今回のデータは、緑膿菌性角膜炎 Pseudomonas keratitis は抗菌薬治療中止後に糖質コルチコステロイドを継続すると再発することがある との臨床的観察を裏付けるものである; 再発のリスクは非ステロイド系抗炎症薬であれば少ないようである。
[訳者注]: ステロイド作用を有する抗炎症薬は、(糖質)コルチコステロイド, 副腎皮質ステロイド, ステロイドホルモンなどとよばれます: (代表的な薬剤の一般名) 酢酸メチルプレドニゾロン methylprednisolone acetateなど
非ステロイド系抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drug, NSAID)は主に解熱鎮痛消炎剤として使用されます。アラキドン酸とよばれるリン脂質から各種の炎症惹起物質が産生される過程を抑制する薬剤があります。
酵素 シクロオキシゲナーゼ cycloxygenase (COX)を阻害し、プロスタグランディンやトロンボキサン産生を抑制するもの: flurbiprofen (商品名 フロベン)など
酵素 リポキシゲナーゼ lipoxygenase を阻害し、ロイコトリエン産生を抑制するもの: nordihydroguaiaretic acid (NDGA)など
Doheny Eye Institute の同時期の他関連論文:
Cornea. 1992 Sep;11(5):398-403.
Anti-inflammatory therapy and outcome in a guinea pig model of Pseudomonas keratitis.
Ohadi C, Litwin KL, Moreira H, Kwitko S, Gauderman WJ, Gritz DC, Gwon A, Jones R, McDonnell PJ.
Doheny Eye Institute, Los Angeles, CA 90033.
Ophthalmology. 1991 Nov;98(11):1693-7.
Treatment of experimental Pseudomonas keratitis with cyclo-oxygenase and lipoxygenase inhibitors.
Moreira H, McDonnell PJ, Fasano AP, Silverman DL, Coates TD, Sevanian A.
Doheny Eye Institute, Los Angeles, CA 90033.

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Written by support

2005/08/24 @ 10:01

カテゴリー: Uncategorized

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