Archive for 7月 2005
眼窩腫瘍 137例と手術合併症
眼窩腫瘍の手術合併症
Ophthal Plast Reconstr Surg. 1992;8(2):88-93.
Complications of surgery for orbital tumors.
Purgason PA, Hornblass A.
Department of Ophthalmology, Manhattan Eye, Ear & Throat Hospital, New York.
[要約の邦訳]
眼窩腫瘍は、眼科手術のほんの一部であるが重要な対象であり、手術合併症についての報告は少ない。この後向きレビュー調査は、多くの眼窩腫瘍症例の全般的な合併症頻度を評価するとともに、将来、外科医の指針となりうるリスクファクターを決定するために行った。単一医療機関において、7年間に合計14名の外科医が137の眼窩腫瘍を治療した。全般的な合併症頻度は 12.4% (17/137)であり、(開頭術でない) 眼窩側からのアプローチ 前方 anterior orbitotomy 97症例中 わずか 3例 (3%)、側方 lateral orbitotomy 40例中 14例 (35%)であった。腫瘍の部位が最も重要な因子で、大部分の合併症は筋円錐内の腫瘍に関連していた。
エントリー「眼窩腫瘍と手術合併症」
http://www.qqiac.com/2005/08/post_a339.html
エントリー「眼窩腫瘍レビュー 米国1264例, 日本244例」
http://www.qqiac.com/2004/11/_1264_244_5fcb.html
エントリー「眼窩の海綿状血管腫」とエントリー内リンク先
http://www.qqiac.com/2005/05/post_67c6.html
http://www.qqiac.com/2004/02/post_8d46.html
もご覧下さい。
弱視, スクリーニング, コクラン・レビュー
小児の弱視スクリーニング検査 (コクラン・レビュー)
Screening for amblyopia in childhood (Cochrane Review).
Powell C, Porooshani H, Bohorquez MC, Richardson S.
The Cochrane Database of Systematic Reviews 2005, Issue 3. Art. No.: CD005020.pub2. DOI: 10.1002/14651858.CD005020.pub2.
http://www.update-software.com/Abstracts/AB005020.htm
最終更新日: 12 May 2005.
[要約 (抄訳)]
背景: 弱視とは、視覚の発達途中で感受性のある時期に治療しなければならない可逆性視力低下である。スクリーニング・プログラムは、このほとんど無症状である状態を発見し、視力改善可能なときに治療目的で子どもを医療機関に紹介するために行われてきた。このようなプログラムの価値や対象者を管理する上での最適プロトコルは、依然として議論がある。
目的: 弱視の有病率を減らす視力スクリーニング法の有効性を評価する。
検索戦略: (原文参照のこと) 言語による制約はなかった。手作業による検索 handsearch は行わなかった。
選択基準: スクリーニングした対象者とスクリーニングしなかった対象者の弱視の発生頻度を比較したランダム化対照試験 randomised controlled trials およびクラスタ・ランダム化試験 cluster-randomised trials のデータを解析する。
データ収集と解析: 検索 electronic searches で得られた研究要約について、著者 2名が別々に評価した。該当した研究論文の全文コピーを入手し、必要あれば、著者が連絡をとった。解析に利用できるデータはなく、メタ解析は行なわれなかった。
主な結果: 視力スクリーニングに関して膨大な論文があったにもかかわらず、スクリーニングした対象者とスクリーニングしなかった対象者の弱視の発生頻度を比較した試験はなかった。現在、試験準備中のデータについては、レビューのアップデートの際に利用できる可能性がある。
著者結論: ランダム化対照試験のデータがないため、弱視の有病率に対する現在のスクリーニング・プログラムの効果を解析することは困難である。エビデンスがないからといって、単に、今までしっかりした試験で調査されていなかったとか、視力スクリーニングは有益ではない、という意味に捉えることはできない。このような試験を促進するために、年齢に相応しい視覚テストの基準データ値を利用できるようにしたり、弱視の定義に関するコンセンサスが必要である。さらに、未治療の弱視状態で生活するときの障害を定量化し、費用便益分析 cost-benefit analysis を行わなければならない。
視力スクリーニング検査と学校
学校で視力検査を行うことにメリットはありますか ?、デメリットはないですか ?
これまで (1966年8月以降)に電子化された検索可能なデータの中には、ランダム化対照試験がなかったため、エビデンスは不明である。
[典拠 : コクラン・レビュー 抄訳]
学齢期の子どもと青少年を対象とした、矯正可能な視力低下を発見するためのスクリーニング検査 (コクラン・レビュー)
Screening for correctable visual acuity deficits in school-age children and adolescents (Cochrane Review).
Powell C, Wedner S, Richardson S.
The Cochrane Database of Systematic Reviews 2004, Issue 4. Art. No.: CD005023.pub2. DOI: 10.1002/14651858.CD005023.pub2.
http://www.update-software.com/Abstracts/AB005023.htm
最終更新日: 24 August 2004
背景: 視力スクリーニング検査は直感的には有益のように思えるが、小中学校でこのようなプログラムを行う価値については疑問視されていた。さらに、スクリーニングを行う最適な年齢や検査頻度についても不透明である。
目的: 学齢期の子どもの中で視力矯正は可能であるが、屈折異常が発見されていない子どもを減らすために視力スクリーニング・プログラムを実施したときの効果を評価する。
検索戦略: [原文参照のこと] 検索に際して、言語や日付による制約はなかった。手作業での調査はできなかったが、将来のアップデートではデータに含みたい。
選択基準: ランダム化対照試験。ランダム化クラスター対照試験 randomised cluster controlled trials (訳者注 1)を含む。
データ収集と解析: 2人のレビューア reviewer が各々、電子化された検索方法によって発見できた研究要約を評価した。基準に該当する試験はなかった。
主要な結果: 該当する臨床試験はなく、分析できなかった。他に検索できた研究を物語のように合成する方法が現在の習慣を説明するために用いられていた。
著者の結論: 現時点では、学校での視力スクリーニングの利点について測定しうる確固とした試験はなかった。視力低下のまま学校に出席すると不利なことも定量化する必要がある。スクリーニング・プログラムの効果は、地理的、社会経済的な環境に依存するでしょうから、いろいろな環境や設定で、視力スクリーニングの利点と有害性に関して計測できるよう十分に計画されたランダム化対照試験が必要である。
[訳者注 1] クラスタ・ランダム化試験 cluster randomized trial
スペースアルク「英辞郎検索」
http://www.alc.co.jp/index.html
「ランダム化試験において症例割り付けを個人単位でなく施設・月などの集団で行う方法であり、症例 (登録)後、直ちに割り付けを必要とする場合に有効と考えられている。」
正常眼圧緑内障とコクラン・レビュー
正常眼圧緑内障に対するインターベンション (コクラン・レビュー)
Interventions for normal tension glaucoma.
Sycha T, Vass C, Findl O, Bauer P, Groke I, Schmetterer L, Eichler H. The Cochrane Database of Systematic Reviews 2003, Issue 1. Art. No.: CD002222. DOI: 10.1002/14651858.CD002222.
http://www.update-software.com/Abstracts/AB002222.htm
最終更新: 08 October 2002
[要約の抄訳]
背景: 正常眼圧緑内障は、視神経が病的に陥凹し、視野が障害される臨床状態である。眼圧が本疾患の視野欠損進行に関与すると言われているが、他の因子、主に血管因子も同様に議論されてきた。
目的: 正常眼圧緑内障に対する内科的および外科的治療の効果を評価する。
検索戦略: [一部邦訳省略(コクラン・レビューで行われる一般的な方法)] に加えて研究者や製薬会社にも連絡した。最終検索日: January 2001
選択基準: 正常眼圧緑内障症例を対象として行われた無作為対照化試験のうち、内科的ないし外科的介入について未治療、プラセボー、他の治療法と比較したもの。
データ収集と解析: 2名のレビューア reviewer がデータを抽出し、矛盾点は協議した[一部邦訳省略]。
主な結果: 視野欠損に関する選択基準に順じて、8件の研究が本レビューに含まれた。 3件の研究のみ患者に関する結果に焦点が合わされていた。臨床試験 1件で、眼圧を低下させることの有益性が発見されたが、白内障進行のためデータを修正した場合のみであった。小規模対象の研究 2件で、カルシウム拮抗薬 brovincamine (訳者注 1) が視野欠損に対して有益であると報告された。
著者の結論: 眼圧を低下させる治療は、1件の研究において白内障進行のためデータを修正した場合のみ、視野結果に対して有意な効果があった。カルシウム拮抗薬についての結果は有望であるが、大規模な臨床試験が行われるべきである。眼圧降下や血行動態の変数に焦点を合わせた研究は、必ずしも正常眼圧緑内障患者の結果に関連しているとはいえない。
[訳者注 1] フマル酸ブロビンカミン
brovincamine fumarate
参照文献 J Glaucoma. 1999 Apr;8(2):117-23.
Effects of oral brovincamine on visual field damage in patients with normal-tension glaucoma with low-normal intraocular pressure.
Koseki N, Araie M, Yamagami J, Shirato S, Yamamoto S.
Department of Ophthalmology, University of Tokyo School of Medicine, Japan.
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1996dir/n2199dir/n2199_01.htm
第100回日本眼科学会総会の特別講演の要旨を掲載した週刊医学界新聞記事
脳循環改善薬サブロミン投与群と非投与群の視野を観察したところ,前者で有意に視野悪化が少なかったが,両群間で経過中眼圧には差がなかったので,何らかの循環障害がNTG進行に関与していることが考えられる
ただし、上記薬品は、平成11年 1月29日付厚生省告示第7号にて再評価指定を受けた脳循環代謝改善剤ですが、メーカーが再評価申請を行わなかったため、現在、薬価削除、回収されているようです。
商品名: サブロミン, アトラミオン, サビンカシン, ザブロン, トーブロミン
http://www.kumayaku.or.jp/kpa/DINews/cva-kaisyu.htm
チモプトールEX vs チモプトール
マレイン酸チモロール点眼液の中で、基剤としてジェランゲルを含有するゲル化製剤の国内商品名は「チモプトールEX」です。
開放隅角緑内障または高眼圧症の成人例に対するマレイン酸チモロール・ゲル化製剤と通常点眼液の効果と忍容性: 6ヶ月, 2重盲検法, 多施設研究.
Clin Ther. 2001 Mar;23(3):440-50.
Efficacy and tolerability of timolol maleate ophthalmic gel-forming solution versus timolol ophthalmic solution in adults with open-angle glaucoma or ocular hypertension: a six-month, double-masked, multicenter study.
Shedden A, Laurence J, Tipping R; Timoptic-XE 0.5% Study Group.
Department of Ophthalmic Clinical Research, Merck Research Laboratories, West Point, Pennsylvania, USA.
[要約の邦訳]
背景: チモロール timolol を高純度精製ジェランゲル製剤にすると、作用時間は改善する。本製剤を 1日 1回使用する短期試験で効果は報告されている。
目的: この研究の目的は、長期臨床試験にてマレイン酸チモロール0.5% ゲル化製剤 (timolol GS) 1日 1回投与法とマレイン酸チモロール0.5% 点眼液 1日 2回投与法の効果と忍容性を検討することであった。
方法: 多施設が参加し 2重盲検法で 6か月間の臨床試験を行った。使用中の眼圧降下薬は、その効果が消失するまで中止 washout 後、開放隅角緑内障または高眼圧症の対象症例 286 例を、0.5% timolol GS 両眼 1日 1回点眼群, 0.5% timolol 両眼 1日 2回点眼群、それぞれ 2:1の比率となるように無作為に割付けた。
全症例は 朝(午前 9時)と夜(午後 9時)に点眼した。timolol GS群では、夜の点眼は基剤のみ点眼し、timolol群は 2回ともに主剤が含まれていた。眼圧(IOP)はトラフ (朝の定時点眼前)と ピーク (点眼 2時間後)に測定し、2, 4, 8, 12, 24週時点で検査した。有害事象は患者レポートによってモニターした。
結果: ランダム割付により 286症例中 191例は timolol GS 群, 95例はtimolol群であった。93% (265/286例) の症例で治験は完了した。治療最終時点 (24週)で、トラフにおける眼圧下降幅は timolol GS群 5.6 ~ 5.9 mmHg, timolol群 6.3 ~ 6.6 mmHg であった。同様の効果は、午前11時(ピーク時)でもみられた。24週時点での両群間の平均眼圧の差は、トラフ時 -0.61 mmHg (95% 信頼区間 -1.44 ~ 0.22) 、ピーク時 -0.79 mmHg (95% 信頼区間 -1.77 ~ 0.20) であり、両製剤で有意差はなかった。
目のかすみと流涙の症状レポートは timolol群に比べて、timolol GS群に有意に多かった (P = 0.04), 一方、灼熱感/刺激感 burning/stinging はtimolol群の方が有意に多かった (P = 0.04)。
12週のトラフ時では、心拍数の減少数はtimolol GS群は timolol群に比べて有意に少なかった (-1.1 対 -4.2 拍数/分 bpm; P = 0.024)。24週のトラフ時では、timolol GS 群の心拍数の方が 最大 2.5 bpm (P = 0.051) 多かった。ピーク時でも同様であり、心拍数の減少数は12週 (-2.7 対 -5.7 bpm; P = 0.006) , 24週 (-3.1 対 -4.7 bpm; P = 0.063)で、timolol GS群は timolol 群に比べて有意に少なかった。治療群間に平均血圧変化量に有意差はなかった。視力、生体顕微鏡検査、眼底検査、視野検査において、両群間に臨床上の差はなかった。
結論: 高眼圧症や開放隅角緑内障の患者において、timolol GS 0.5%製剤 1日1回点眼は、timolol 0.5%点眼液 1日2回に相当する眼圧下降効果がみられた。
[訳者注:]
チモロール timolol GS とは、点眼後に結膜嚢でゲル化し、持続性に作用する製剤です。商品名等については、
  http://www.hps.or.jp/news/5524.htm
など、ご参照下さい。
Gellan gum ジェランガム とは、細菌 Pseudomonas elodea が炭水化物を発酵したときに産出する高分子多糖類を精製したものです。
  http://www.matse.fukui-u.ac.jp/~bussei/gellan.htm
  http://www.fao.org/docrep/W6355E/w6355e0f.htm
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