evidence-based medicine

Archive for 6月 2005

acute retinal necrosis syndrome, HSV-2

leave a comment »

acute retinal necrosis syndrome を世界で最初に報告(1971年) された東北大学 浦山 晃 先生は 仮に「桐沢型ブドウ膜炎」と名づけました。
エントリー「Acute retinal necrosis 桐沢型ブドウ膜炎」をご参照下さい:
  http://www.qqiac.com/archives/000120.html
残念ながら、当時は眼内のウイルス抗原を証明する有力な検査法がなかったため、本疾患は原因不明のものとされました。また、権威ある英語医学専門雑誌に本論文を投稿されなかったこと、外国人には理解困難な病名であったり (病名として人名を付ける際に、論文の筆頭著者であるご本人や共著者ではなく、上司である当時の眼科講座の教授名を採用されました)、 その後の眼科研究者の一部が病名・論文タイトルとして ARNS の方だけを引用したり、日本の学者でも"浦山論文"を自らの論文の中で強くアピールしなかったため、一時期、本論文の価値や独創性を知る眼科医は国内でも少くなったことがありました。
"浦山論文"の考案には「おそらくこのような型のブドウ膜炎を経験された方はほかにもあるだろう。特にこの軽症型、頓挫型、両眼型と見なすべきものがあれば、われわれの考えはある程度変更を余儀なくさえれるかも知れないので、各位のご教示をお願いしたい。」と記載されています。また、特別講演論文「葡萄膜炎の臨床」の中で自験例を桐沢型ぶどう膜炎として報告するに至った経緯が述べられています。

いまから25年前の昭和34年(1959), 当時東北大学に勤務しておった私は, 24歳美容師の左眼に急激に起こった葡萄膜炎で, それまで経験したことのない症状経過を示した1例に遭遇した. これを最初の契機としてその後、同様なる症例が折にふれて積み重ねられ, 10年間に計6例となった. 文献上, この種の眼病変そのままに慨当する記載が発見されなかったので、昭和46年(1971) 「網膜動脈周囲炎と網膜剥離を伴う特異な片眼性急性ブドウ膜炎について」という表題で「臨床眼科 25巻 3号 桐沢長徳教授退官記念論文集 607~619頁」に浦山晃, 山田酉之以下共同研究者の連名で発表した. その際とりあえず「桐沢型葡萄膜炎」という仮称を与えて報告したのが本病の展開の発端である。

日本眼科学会雑誌. 1984 Jan;88(1):22-51.
Clinical aspect of uveitis
Urayama A, Sakuragi S, Sakai F, Koseki T, Tanaka Y, Yamaki K, Nakayama R, Hirano Y, Sakuraba H, Takahashi H, et al.
その後、外国において acute retinal necrosis syndrome の患者眼内から、水痘帯状ペルペスウイルスが初めて検出されました。さらに、単純ヘルペスウイルスによる本症候群を国内の眼科医が証明し、その後も続々と新知見・治療法が発表されました。
以下に、まれな本疾患の疾患背景を理解する上で、重要な最近の論文をいくつか引用、抄訳いたします。
以下は 単純ヘルペスウイルス 2型 HSV-2 による ARN 症候群に関する3か国の報告論文です。
【日本】
"単純ヘルペスウイルスによる acute retinal necrosis syndrome において、日本では 単純ヘルペスウイルス 2型が多い"
Am J Ophthalmol. 2000 Mar;129(3):404-5.
High prevalence of herpes simplex virus type 2 in acute retinal necrosis syndrome associated with herpes simplex virus in Japan.
Itoh N, Matsumura N, Ogi A, Nishide T, Imai Y, Kanai H, Ohno S.
acute retinal necrosis syndrome (訳者注: 以下の邦訳文では acute retinal necrosis 症候群と一部を日本語でも表示しました)は、1971年日本人眼科医らによって最初に眼科学の分野に記載された 視覚に著しい障害を残す devastating 症候群です。本症候群は単純ヘルペスウイルス(訳者注:単純疱疹ウイルス HSV と表示します) と水痘帯状ペルペスウイルス(訳者注: 水痘帯状疱疹ウイルス VZV と表示します) によって起こされることが証明されました。
米国ぶどう膜炎学会 American Uveitis Society 基準に該当する acute retinal necrosis 症候群 16 症例は、1993年から1999年にかけて横浜市立大学病院にて入院治療を行った。
16症例中 7例の前房水ないし硝子体からPCR法によって HSV 2型 のDNAが検出されたが、HSV 1型, VZV, Epstein-barr ウイルス(訳者注: EBVと略します), サイトメガロウイルス(訳者注: CMVと略します)については陰性であった。HSV-2 DNA陽性の症例は全例、女性で、平均年齢 36才 ( 14才から 52才)であった。逆に、VZV DNA は同様の検体・方法により、残りの 9症例から検出されたが、HSV 1型, HSV 2型, EBV , CMV については陰性であった。VZV DNA陽性の症例は女性 4例、男性 5例、平均年齢 60才 ( 50才から 68才)であった。HSV-2が真の原因ウイルスであることを確定診断するために、最近開発されたグリコプロテイン G を使用する型特異的抗体検出法 ( Gull Laboratories, Salt Lake City Utah) を用い、患者血清を調べた。
これらの感染が初感染であるか、再発であるか、抗 HSV 抗体のサブクラス(訳者注: IgM は初感染時, IgG は再発・再活性化時に上昇します)についても検査した。VZV DNA陽性の ARN 症候群患者は全例、抗 HSV-2 抗体が陰性であったが、HSV-2 DNA陽性の ARN 症候群患者は抗 HSV-2 抗体が陽性となり、抗 HSV-1 抗体陰性であった (Table 表 1)。抗 HSV 抗体陽性の ARN 症候群 14症例の血清HSV 抗のサブクラスは、IgG であった。
ほとんどの性器ヘルペスが男女ともにHSV 2型で起こる米国に比べて、日本ではHSV 2型による女性の性器ヘルペス有病率は 低い (34.5%) 。女性における HSV 2型 の血清陽性率も、米国 (27.8%) に対して 日本 (7.0%) であり、著しく低頻度である。HSV 2型感染症有病率が低いのは、日本国内の女性には抗 HSV-2 抗体陽性者が少ないからである。この疫学的背景から、日本では HSV 2型は単純疱疹ウイルスに関連した acute retinal necrosis syndrome の真の原因ウイルスと考えられる。
日本国内の女性にみられるヘルペス感染症ではHSV 2型が少ないのであるが、今回の著者らの研究により acute retinal necrosis 症候群では HSV 2型 の有病率が高いことが血清学的に証明された。HSV 2型患者全症例が、抗 HSV 1型 抗体を保有していない患者であり、HSV 2型は初感染のタイプではないが初めての感染症症状である。一方、日本では患者と同年代の女性の HSV 1型抗体陽性率は高い(60%-70%)。HSV 1型抗体を保有することにより、通常、HSV 2型感染症の重篤な発症を予防することが知られている。HSV 1型の初感染歴がない患者の眼部に HSV 2型が再発することは、acute retinal necrosis syndrome の臨床所見に関与する可能性がある。
日本と米国とのHSV 2型の病因性の違いやいろいろな集団におけるHSV 2型の宿主の感受性の違いについて、さらに遺伝子・生物学的研究を行うと、日本でacute retinal necrosis 症候群にHSV 2型が多い理由がわかり、本症候群のメカニズムが解明されることになるであろう。
TABLE 1. Prevalence of Herpes Simplex Virus Type-Specific Antibodies and Subclass of Nontype-Specific Antibodies
単純疱疹ウイルスの型特異的抗体および非特異的抗体サブクラスの頻度
[訳者注: 引用論文の表 1 に使用されている用語を訳し、患者眼内の房水または硝子体液の検査(PCR法)にてウイルスDNAが検出されたHSV 2型 と VZV を分けて表示しました]
単純疱疹ウイルス 2型 HSV-2 によるARN 症候群 7例

型特異的血清抗体
HSV-1 IgG           0
HSV-2 IgG           7
 
非特異的血清抗体
IgG                 7
IgM                 0

水痘帯状疱疹ウイルス VZV によるARNS 症候群 9例

型特異的血清抗体
HSV-1 IgG           7
HSV-2 IgG           0
 
非特異的血清抗体
IgG                 7
IgM                 0

【米国】
若年患者 acute acute retinal necrosis syndrome の原因としてのHSV 2型
Ophthalmology. 2001 May;108(5):869-76.
Herpes simplex virus type 2 as a cause of acute retinal necrosis syndrome in young patients.
Van Gelder RN, Willig JL, Holland GN, Kaplan HJ.
Department of Ophthalmology and Visual Sciences, Washington University Medical School, St. Louis, Missouri.
(要旨の要点)
ARN 症候群 10症例 を対象として原因ウイルスを調査したところ、HSV 2型は若年患者で最も多い原因ウイルスであり (平均年齢 21.2才, 標準偏差 10才, 範囲 17-39才)、一方、高年齢者では VZV がより一般的である (平均年齢 40.8才, 標準偏差 12.2才, 範囲 29-58才). 両者間には有意差があった (P= 0.033).
VZV は ARN 症候群の最も多い原因ではあるが、HSV 2型 HSV-2 は、特に若年患者においては重要な原因ウイルスである。
【フランス】
急性単純ペルペスウイルス2型網膜壊死の臨床的特徴
Am J Ophthalmol. 2004 May;137(5):872-9.
Clinical characteristics of acute HSV-2 retinal necrosis.
Tran TH, Stanescu D, Caspers-Velu L, Rozenberg F, Liesnard C, Gaudric A, Lehoang P, Bodaghi B.
Department of Ophthalmology, Pitie-Salpetriere Hospital, 47-83 Boulevard de l’Hopital, 75013 Paris, France.
(要旨の要点)
2つのヨーロッパ・センターから紹介された HSV 2型 HSV-2 による acute retinal necrosis 症候群 11症例 12眼 について後向き調査を行った。
両眼罹患例では最初に症状を来たした患側発病の年齢: 平均 36才 (10-57才)
女性 5例, 男性 6例. 全例、免疫不全者ではない。
既往歴:
 · 新生児ペルペス (n = 1)
 · ARN の既往 (n = 3)
 · 外傷 (n = 1)
 · ARN発症前のコルチコステロイド薬全身投与 (n = 3)
色素沈着を伴う網脈絡膜瘢痕は 3症例にみられた。
治療内容:
アシクロビルまたはフォスカルネット (acyclovir or foscarnet) の静脈内大量投与
+/- (併用または併用しない) 硝子体内ガンシクロビル ganciclovir
+/- (併用または併用しない) インターフェロン interferon
観察期間: 平均 14.5か月 ( 5-22か月)
視力経過: 5 眼 (41.7%) で 2段階の改善あり。最終視力は、4 眼 (33.3%)で 約 0.3 (snellen 20/60)以上, 4 眼 (33.3%)で 0.05 (20/400)以上, 4 眼 (33.3%)で0.05未満.
結論: 新生児ヘルペスの既往、脳外科手術、眼部外傷、大量ステロイド使用などの誘因、網脈絡膜瘢痕所見から、HSV 2型網膜炎の発症は本ウイルスの再活性化を反映したものと考えられる。

Written by support

2005/06/10 at 15:07

カテゴリー: Uncategorized

Acute retinal necrosis 桐沢型ブドウ膜炎

leave a comment »

Acute retinal necrosis 症候群 (ARN 急性網膜壊死) に関する最近の眼科論文のうち、本文がフランス語で記載されている論文名とその要旨の邦訳を中心に本エントリーでお伝えいたします。[発表年、降順]で列記します。最近では、本症候群のうち、原因がヘルペスウイルスによるものは、necrotizing herpetic retinopathy 【壊死性ヘルペス性網膜症】, necrotic herpetic retinitis 【壊死性ヘルペス性網膜炎】ともよばれます。
本症候群名 「Acute retinal necrosis syndrome」については、1982年 Fisher J.Pら、Sternberg P Jr らが名づけたものですが、Hayreh SS の総説論文(1985年,下記の要旨参照)に述べられているように、以前から異なる病名で発表されていました。その第一報は、日本における 1971年報告の「桐沢型ブドウ膜炎」症例です。
論文名「網膜動脈周囲炎と網膜剥離を伴う特異な片眼性急性ブドウ膜炎について
東北大学 浦山 晃 先生,他が ARN などを伴う6症例を「桐沢型ブドウ膜炎」と名づけ、1971年 報告されました(臨床眼科 25(3):607-619,1971)。患者の発症時期は1959年(症例1)から1969年(症例6)迄です。英語論文でなかったため、その後日本の研究者が下記の病名で世界に紹介しました。
Kirisawa-type uveitis (Hayasaka S,他 1983年)
Kirisawa’s uveitis (Saga U,他 1983年)
Kirisawa-Urayama type uveitis (Usui M,他 1988年, Iizuka Y,他 1999年)
病名についての経緯、国内の論文、英語論文については、
ブログ second opinion 内の「Acute retinal necrosis (ARN) syndrome」関連エントリー
  日本のARN 症候群の特徴
    http://infohitomi.biz/archives/000037.html
  HSVによるARN 症候群の再発と誘因
    http://infohitomi.biz/archives/000038.html
  両側性 ARN syndrome
    http://infohitomi.biz/archives/000039.html
をご覧下さい。
J Fr Ophtalmol. 2004 Sep;27(7):795-800.
単純ペルペスウイルス 2型による髄膜脳炎を伴う両眼性 ARN 症候群. 1症例の報告
Bilateral acute retinal necrosis syndrome associated with meningoencephalitis caused by herpes simplex virus 2. A case report
Cardine S, Chaze PA, Bourcier F, Amara N, Prevost G, Ruhomauly H, Garandeau C, Maisonneuve L, Benzacken L.
Service d’Ophtalmologie, Centre hospitalier Robert Ballanger, Aulnay sous Bois.
序文: Acute retinal necrosis (ARN) 症候群は、ほとんどのケースで予後不良となる、まれなウイルス性疾患です。進行性網膜壊死、閉塞性血管炎、ときに眼外病変を伴う眼炎症を特徴とします。
症例報告: 症例は脳血管障害が疑われて紹介受診となった 62歳女性例です。眼科学的検査にて、広範な網膜壊死による重度の両眼視力障害がありました。前房水と脳脊髄液の PCR検査によって、単純疱疹ウイルス 2型による髄膜脳炎を伴う ARN 症候群と確定診断されました。腰椎部分の脊柱管狭窄に合併した疼痛のためステロイド薬を髄腔内注射したあと、単純疱疹ウイルス 2型が再活性化 (IgG+ , IgM-) したものと推測されました。治療として、アシクロビルの静脈内注射を 3週間行いました。4ヶ月後、両眼の網膜剥離を来たしました。
考案と結論:単純疱疹ウイルス 2型によるARN 症候群は、潜伏感染中のウイルスが神経系疾患の治療歴を有する患者で再活性化したり、ウイルスの先天性感染により発症することが多い。両側発症と合併症のリスクを減らすために抗ウイルス薬治療を早期に始めなければなりません。
J Fr Ophtalmol. 2004 May;27(5):538-46.
壊死性ヘルペス性網膜炎
Necrotic herpetic retinitis
Fardeau C.
Service d’Ophtalmologie, Hopital Pitie-Salpetriere, 91, boulevard de l’Hopital, 75013 Paris.
壊死性ヘルペス性網膜炎の診断は臨床的な根拠により、緊急で適切な静脈内および硝子体内治療を促すように行われます。ヘルペスウイルス物質の同定に際して、眼内検体に対するPCR法が最も成功します。単純疱疹ウイルスや帯状疱疹ウイルスによって起こる典型的な acute retinal necrosis syndrome および 正常免疫能患者や免疫能低下状態の患者に見られる異なる臨床病型について記述しました。鑑別診断として、トキソプラズマ症、梅毒、眼内リンパ腫によって起こる非典型的な網膜壊死所見を含みます。眼内検体は原因診断を確定するために役立ちます。急性期の治療戦略と予防治療について記述しました。臨床的な結果については、網膜壊死の拡大を阻止するような早期の適切な治療法が影響するようです。
J Fr Ophtalmol. 2004 Mar;27(3):223-36.
壊死性ヘルペス性網膜症の原因ウイルスと治療
Viral cause and management of necrotizing herpetic retinopathies
Tran TH, Bodaghi B, Rozenberg F, Cassoux N, Fardeau C, LeHoang P.
Service d’Ophtalmologie, Hopital Pitie Salpetiere, 47-83, boulevard de l’Hopital, 75013 Paris.
目的: 壊死性ヘルペス性網膜症の原因ウイルスと治療を研究する
方法: 1997年 3月から 2001年 6月までの期間中、急性網膜壊死 (acute retinal necrosis ARN) または、進行性外層網膜壊死 (progressive outer retinal necrosis PORN) と診断された患者の診療録を後向き調査した。PCR検査ないし眼内抗体産生の検出法による原因ウイルス決定のため、33症例から眼内検体を採取した。
結果: 平均年齢は 43.4歳。ヘルペスウイルス・ゲノムは 29症例 (80.5%) で同定された。ARN 群 (32 症例, 38 眼) では、単純疱疹ウイルス(HSV)DNA が 11 症例 (34.4%)で発見された。水痘帯状疱疹ウイルス(VZV) は 9症例 (28.1%), サイトメガロウイルス (CMV) は 4症例 (12.5%)であった。1症例 (3.1%)は Epstein-Barr ウイルス (EBV) 感染症であった。ARN 群では、初回検査時に 6症例が両眼性であり、経過中両眼性となった症例は 4症例であった。PORN 群 ( 4症例, 8 眼)では、網膜炎は両眼性であり、全例で VZV DNA が検出された。2症例はアシクロビル acyclovir 静脈注射, 6症例 フォスカルネット foscarnet 単独治療, 10症例 foscarnet + acyclovir 静脈注射, 18 症例は foscarnet 静脈注射とガンシクロビル ganciclovir 硝子体注射にて治療を行った。壊死性ヘルペス性網膜炎の合併症として、白内障 (26%), 視神経萎縮 (23.9%), 網膜剥離 (17.4%) であった。最終視力は 47.8% の症例で 0.1以下であった
結論: 病気の進行度と予後は、HSV, VZV, CMV によって起こるヘルペス性壊死性網膜炎では異なる可能性があるので、原因ウイルスを決定することは重要である。視力予後は、重点的な抗ウイルス治療により改善するが、合併症が発生すると視力不良となる。
J Fr Ophtalmol. 2004 Jan;27(1):7-13.
急性網膜壊死: 22症例の臨床像, 治療, 予後
Acute retinal necrosis: clinical presentation, treatment, and prognosis in a series of 22 patients
Morel C, Metge F, Roman S, Scheer S, Larricart P, Monin C, Laroche L.
Centre Hospitalier des Quinze-Vingts, Paris.
目的: 急性網膜壊死の診断例における臨床的結果と内科的治療について評価する
対象と方法: 1993年から2000年までの間に急性網膜壊死 22症例 が当科に紹介となった。臨床経過、最初の臨床症状から診断にいたるまでの遅れ、微生物学的プロフィール、治療、合併症について後向き調査を行った。
結果: 全症例が硝子体内炎症を呈していた; 網膜炎は症例の 82% に見られた。6症例 (27%) では、それでも診断が遅れ、初回眼科診察から抗ウイルス治療開始まで平均 5.5日の遅延があった。19症例に対して検査を実施し、ウイルス学的には、このうち 16症例で診断確定となった: 帯状疱疹ウイルス 11例, 単純疱疹ウイルス 1型 3例, 単純疱疹ウイルス 2型 1例, サイトメガロウイルス 1例 であった。9症例ではアシクロビルとフォスカルネットの併用治療を行い、13症例はアシクロビルの単独治療であった。アシクロビルを投与された 16症例中1例では、治療後 2日目には効果が見られず、フォスカルネット追加後に治癒した。治療終了時に 1症例にのみ再発が見られた。11症例に網膜剥離が発症し、全例増殖性硝子体網膜症を併発した。このうち、手術療法を受諾した 10症例中 7例は手術が成功した。22症例中 11例が最終視力 0.1まで、2例は 0.5まであった。
結論: 自験例では、アシクロビル acyclovir 単独治療は大部分の症例において十分有効であった。抗ウイルス治療を行っても、急性網膜壊死の予後は不良である。網膜剥離が主要な合併症である。
Hayreh SS は、1985年当時、acute retinal necrosis syndrome を1つの「眼疾患単位」と捉え、78症例に及ぶ症例報告を収集し、詳細な臨床的記述、病因、用語についてのレビューを行った。
Dev Ophthalmol. 1985;10:40-77.
So-called ‘acute retinal necrosis syndrome’–an acute ocular panvasculitis syndrome.
Hayreh SS.
抄訳: 汎ぶどう膜炎、網膜血管炎、網膜壊死 (続発性網膜剥離を高率に伴う)、高頻度にみられる視神経萎縮を特徴とする急性眼疾患は、これまで異なるエポニム eponym で報告されており、1971年の(訳者による追加: 浦山先生の) 第一報(訳者による追加: 6症例)以降の合計74症例 (103眼)の報告例と著者の発表症例 4例を合わせた 78症例 (107眼) をレビューした。基本病理像は、虹彩、脈絡膜、網膜、視神経乳頭の急性血管炎であり、脈絡膜、網膜、視神経乳頭の血管閉塞を来たす: 臨床像は汎ぶどう膜炎を伴うこれらの組織の虚血性病巣である。網膜壊死は本疾患にみられる多彩な病変の1つに過ぎないので、acute retinal necrosis syndrome と呼ぶよりも acute ocular panvasculitis syndrome (訳者による追加: 急性眼汎血管炎症候群) と呼称した方が相応しいと考える。 (訳者による追加: と著者 Hayreh SS は述べている。当時の研究では) 汎血管炎の原因は依然としてミステリーである。

Written by support

2005/06/08 at 15:27

カテゴリー: Uncategorized

結核治療薬 エタンブトール イソニアジド

leave a comment »

米国食品医薬品局 FDA の評価と解説(日本語訳)をお知らせいたします。
■ エタンブトール ethambutol(商品名 エサンブトール錠, エブトール錠 など)
結核治療薬の1つ。副作用として、視力・色覚障害、肝障害がよく知られています。
リスク分類「B」
生殖期の動物による対照化試験(controlled studies)では、動物胎児にリスクはありません。妊婦を対象とした充分な対照化臨床試験はありません。
【胎児へのリスク】
ヒト胎盤を通過します。ヒトに関するデータは少ないのですが、先天異常との関連性を指摘した報告はありません。
【授 乳】
乳汁中に分泌されますが、授乳は安全です。
■ イソニアジド isoniazid INH(商品名 イスコチン錠, スミフォン錠 など)
他の結核治療薬と併用します。単剤投与は結核の予防目的となります。副作用として、ビタミン B6 欠乏がよく知られています。末梢神経炎の発生予防のため、ビタミンB6 製剤を併用します。
リスク分類「C」
動物実験では、胎児への副作用や毒性が見られました。妊婦を対象とした充分な対照化臨床試験はありません。本剤は、胎児などに対するリスクよりも治療上の有益性が上回るときのみ使用すべきです。
【胎児へのリスク】
ヒト胎盤を通過します。妊娠初期では多指症との関連性があります。イソニアジドは悪性中皮腫を来たす薬品として、子宮内で本剤に曝露した子どもにおける発がん性が指摘されています (注1)。新生児の出血性疾患と母親のイソニアジド治療との関連性が指摘されています。
【授 乳】
乳汁中に分泌されます。授乳は安全ですが、乳児に神経炎と肝炎の所見・症状が現れないか観察すべきです。
 注1:  http://www.fda.gov/medwatch/SAFETY/LABEL/aug96.htm

Carcinogenesis and Mutagenesis: Isoniazid has been shown (replaces "reported") to induce pulmonary tumors in a number of strains of mice. Isoniazid has not been shown to be carcinogenic in humans. (Note: a diagnosis of mesothelioma in a child with prenatal exposure to isoniazid and no other apparent risk factors has been reported). Isoniazid has been found to be weakly mutagenic in strains TA 100 and TA 1535 of Salmonella typhimurium (Ames assay) without metabolic activation.

カテゴリ「A-X」については、
http://category.xrea.cc/drugs/000001.html
のリンク先でご確認下さい。
FDA: A, B, C, D, X
TGA: A, B1, B2, B3, C, D, X

Written by support

2005/06/01 at 08:03

カテゴリー: 妊娠、授乳とクスリ