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HSVによるARN syndrome の再発と誘因

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単純ヘルペスウイルスによる Acute retinal necrosis syndrome (ARN 症候群): 再発例と再発の誘因
HSVの再発は、初感染(多くは、感染時は無症状)後、数ヶ月、数年、数十年後におこることがあります。その大部分は、初感染後に潜伏したウイルスの再活性化によるもので、外界のウイルスによる再感染はごくまれといわれています。
ウイルス再活性化の誘因として、

高体温 hyperthermia
紫外線曝露
月経
外傷
コルチコステロイド(ステロイド薬)
免疫抑制薬(コルチコステロイド以外)
手術
角膜手術用エキシマレーザー(EXIMER)
免疫不全状態
緑内障治療薬 ラタノプロスト点眼液 (商品名 キサラタン)
妊娠 ?? (文献 #007)

があります。これらの再発( HSV再活性化)の誘因は、角膜炎や口唇ヘルペスの症例でよく知られてますが、最近、妊娠中に ARN を発症した症例報告があり、論文著者は妊娠中の細胞性免疫能変化に注目しています。
【参考文献】
Int Ophthalmol Clin. 2000 Spring;40(2):85-109.
Advances in diagnosis and management of herpetic uveitis.
Gaynor BD, Margolis TP, Cunningham ET Jr.
【アシクロビルによる予防的治療】
ランダム化二重盲検比較対照試験 randomized, double-blind, placebo-controlled trial による アシクロビル のHSV 再発予防効果.
N Engl J Med. 1998 Jul 30;339(5):300-6.
Acyclovir for the prevention of recurrent herpes simplex virus eye disease. Herpetic Eye Disease Study Group.
No authors listed
HSV による眼病変を有した 703名の免疫機能が正常の患者をアシクロビル 一日 400mg×2回 投与群と偽薬(プラセボー)群に無作為に割付け、1年間内服を続け、その後 6か月間は両群無治療で観察のみ行ったところ、HSV による実質性角膜炎などの眼病変と口唇ヘルペスの再発はアシクロビル投与群において有意に少なかった。
また、アシクロビルには角膜手術後の再発予防効果も認められている。
Cornea. 1994 May;13(3):232-6.
A prospective randomized trial of oral acyclovir after penetrating keratoplasty for herpes simplex keratitis.
Barney NP, Foster CS.
Harvard Medical School, Boston, Massachusetts.
HSV 角膜炎に対する全層角膜移植術後にアシクロビルを内服した群は術後に角膜ペルペスの再発はなく、非投与群に比べて有意に再発を抑制し、また、移植角膜片の機能不全は非投与群に比べて少なかった。
以下に、最近の報告例を列記いたします。
#001) 49才男性. HSV 1型脳炎 2年後 片眼 ARN症候群発症(同一ウイルスによる、再発). 脳症の再発なし。
網膜ニューロンに HSV 1型の潜伏感染していたと考えられる。

This case suggests that following encephalitis retinal neurons may function as a reservoir for latent HSV-1, that can be reactivated to cause ARN in situ several years later.

#002) ARN症候群の同一眼での再発 2症例. (症例 1) 60才男性 左眼, 13年後 (症例 2) 49才女性 右眼, 8年後. アシクロビルで完治. 再発部位は以前の病巣と関連がないところであった。
#003) 21年後に他眼にARNS症候群を発症し、単純ヘルペス脳炎を併発した HSV 2型の1症例: 脳炎と右眼 ARN が左眼から 21年後発症. 既往歴: 8才のとき、左眼の ARNが疑われた。性器ヘルペスはその後も再発していた.
以下の2論文は硬膜外・髄腔内ステロイド注射の副作用
#004) 硬膜外ステロイド注射後のARN 発症.
背部痛のため、硬膜外ステロイド注射を受けた 2症例に ARN 症候群発症. 受診が遅れた 1例は、両眼の続発性裂孔原性網膜剥離と黄斑パッカーを来たした。
患者は硬膜外ステロイド注射治療に際して、本症候群の発症の可能性について副作用の警告を受け、注射後に光視症、光過敏症 (羞明) 、かすみ、これまでになかった飛蚊症を自覚したときに報告するように説明を受けるべきである。

Patients should be warned about this possibility and advised to report should photopsias, photosensitivity, blurred vision, or new floaters develop after treatment.

#005) 腰椎部分の脊柱管狭窄に合併した疼痛のためステロイド薬を髄腔内注射したあと、単純疱疹ウイルス 2型が再活性化 (IgG+ , IgM-) したものと推測された1症例.
エントリー「Acute retinal necrosis 桐沢型ブドウ膜炎」
  http://www.qqiac.com/archives/000120.html
をご覧下さい。
【妊娠と ARN 症候群】
妊娠中発症のARN 症候群の報告数は これまで2例程度である。
下記論文の結論の1つは「非特異的刺激物質 (mitogen) に対するリンパ球の反応低下が ARN 症候群を併発した妊婦にみられ、出産後にはこの反応は正常化した。」ということである。正常妊娠にみられる免疫反応の変化と ARN 症候群の患者に見られる変化との類似性を指摘した論文である。
妊娠中の単純ヘルペスウイルス性 acute retinal necrosis.
#007) Eur J Ophthalmol. 2003 Aug-Sep;13(7):662-5.
Herpes simplex virus acute retinal necrosis during pregnancy.
Chiquet C, Thuret G, Poitevin-Later F, Gain P, Najioullah F, Denis P.
Department of Ophthalmology, Edouard Herriot Hospital, Lyon, France.
妊娠は免疫応答に変化を来たすので、著者らは妊娠によって感染症の発病が促進されるか確かめるために ARN を合併した妊婦の免疫機能を調査した。
HSV 1型は、免疫機能の正常な患者、免疫能が低下した患者ともに ARN を惹起させる。ARN の病態生理はよく解っていないが、免疫異常が本症候群患者で指摘されている。
症例報告:
34歳, 女性. 妊娠 5.5か月. 1999年 1月、4日前から左眼の視力低下を自覚。徐々に悪化した。一般診察では、口唇皮膚や外陰部に潰瘍はなかった。妊娠経過も順調であった。左視力は光覚弁で、細隙灯顕微鏡検査では、中等度の虹彩炎と肉芽腫性角膜後面沈着物がみられ、眼圧は 18mmHgであった。眼底鏡による検査では、著明な硝子体炎、網膜血管周囲の散在性網膜出血、網膜血管炎、周辺部網膜剥離がみられた。癒合した周辺部網膜の網膜壊死が網膜全体に拡大している片側性 ARN と診断された。前房水の PCR 検査にて、HSV 1型のDNAが検出された。同一サンプルからはHSV 2型, VZV, CMV は検出されなかった。産婦人科的検査は正常で、特に、子宮頚部に病変なく、HSV 1型のPCR 検査は陰性であった。超音波検査やモニターにおいて、胎児は正常であった。神経学的検査、脳MRI は正常で、脳脊髄液のPCR検査 (HSV 1,2型)などは陰性であった。
免疫機能検査:
ステロイド治療開始前の診察時と出産 1年後でステロイド治療が行われていない時期との末梢血の検査成績を【表 1】に示した。(表 Table は省略)
リンパ球幼若化試験では、ConA (concanavalin A), PHA (phytohemagglutinin), PWM (pokeweed mitogen)の 3種の非特異的刺激物質(mitogen)に対するリンパ球の反応は有意に低下していた (paired t-test, それぞれ p=0.042, 0.047, 0.035)。リンパ球数、T 細胞:CD3, CD4, CD8, B細胞:CD19, NK細胞 は両検査時点で正常範囲内であった。
抗ウイルス治療は、導入時の用量として アシクロビル注射液 30 mg/kg/d, 10日間, アスピリン 125mg/d, および 酢酸プレドニゾロン内服薬 1mg/kg/d を使用した。ステロイド点眼と散瞳薬も併用した。3か月後、視力は不良で(光覚弁程度), 視神経萎縮と網膜剥離を呈していた。健康児を出産、先天性ヘルペス感染症はみられなかった。抗ウイルス治療は 12か月後に中止した。2002年 12月までには他眼の発症はなかった。
考案: Rochat C ら(1994年) は、徹底的な文献レビューより ARN 症例 216例中、16% に細胞性免疫能の低下 所見を発見した。病気の重症度やタイプは、免疫障害に依存しているようである。
妊娠中には、正常者であっても mitogenに対するリンパ球の反応は一時的に低下し細胞性免疫能の障害が起こるとされるが、この反応の変化は ARN 症候群の患者に見られる変化といくつかの類似性がある。
下記の Shiraki K らの論文は、妊婦に発症した acute retinal necrosis の最初の報告例であるが、妊娠中の免疫能検査は実施されていない。また、要約にはウイルスタイプの記載がない。
Am J Ophthalmol. 1998 Jan;125(1):103-4.
Acute retinal necrosis late in the second trimester.
Shiraki K, Moriwaki M, Ataka S, Henmi K, Miki T, Kanaoka Y.
Department of Ophthalmology, Osaka City University Medical School, Japan.
目的: 妊娠中の acute retinal necrosis 患者治療例について報告する
方法: 24歳、妊娠23週に acute retinal necrosis と診断された。妊娠25週から アシクロビルとインターフェロン治療が開始された。妊娠26週の時、硝子体手術が施行された。
結果: 壊死網膜は術後 3週までに瘢痕増殖 gliotic 組織となった。患者視力は 左眼 0.5 まで改善した。
結論: アシクロビルとインターフェロン治療ののち手術治療を行うことで部分的に患者視力を回復させることができた。また、胎児の発育にも影響はなかった。
[文献名]
#001) Ophthalmic Surg Lasers. 2002 May-Jun;33(3):250-2.
Unilateral acute retinal necrosis occurring 2 years after herpes simplex type 1 encephalitis.
Kim C, Yoon YH.
Department of Ophthalmology, Asan Medical Center, College of Medicine, University of Ulsan, Seoul, Korea.
# 002) Am J Ophthalmol. 2001 May;131(5):659-61.
Same eye recurrence of acute retinal necrosis syndrome.
Matsuo T, Nakayama T, Baba T.
Department of Ophthalmology, Okayama University Medical School, Okayama City, Japan.
#003) Am J Ophthalmol. 1996 Dec;122(6):891-2.
Twenty years’ delay of fellow eye involvement in herpes simplex virus type 2-associated bilateral acute retinal necrosis syndrome.
Schlingemann RO, Bruinenberg M, Wertheim-van Dillen P, Feron E.
Department of Ophthalmology, University of Amsterdam, The Netherlands.
#004) Am J Ophthalmol. 2003 Jul;136(1):192-4.
Acute retinal necrosis following epidural steroid injections.
Browning DJ.
Charlotte Eye, Ear, Nose, and Throat Associates, Charlotte, North Carolina, USA.
#005) J Fr Ophtalmol. 2004 Sep;27(7):795-800.
Bilateral acute retinal necrosis syndrome associated with meningoencephalitis caused by herpes simplex virus 2. A case report
Cardine S, Chaze PA, Bourcier F, Amara N, Prevost G, Ruhomauly H, Garandeau C, Maisonneuve L, Benzacken L.
Service d’Ophtalmologie, Centre hospitalier Robert Ballanger, Aulnay sous Bois.
#007) Eur J Ophthalmol. 2003 Aug-Sep;13(7):662-5.
Herpes simplex virus acute retinal necrosis during pregnancy.
Chiquet C, Thuret G, Poitevin-Later F, Gain P, Najioullah F, Denis P.
Department of Ophthalmology, Edouard Herriot Hospital, Lyon, France.

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2005/06/11 @ 13:54

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