evidence-based medicine

Acute retinal necrosis 桐沢型ブドウ膜炎

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Acute retinal necrosis 症候群 (ARN 急性網膜壊死) に関する最近の眼科論文のうち、本文がフランス語で記載されている論文名とその要旨の邦訳を中心に本エントリーでお伝えいたします。[発表年、降順]で列記します。最近では、本症候群のうち、原因がヘルペスウイルスによるものは、necrotizing herpetic retinopathy 【壊死性ヘルペス性網膜症】, necrotic herpetic retinitis 【壊死性ヘルペス性網膜炎】ともよばれます。
本症候群名 「Acute retinal necrosis syndrome」については、1982年 Fisher J.Pら、Sternberg P Jr らが名づけたものですが、Hayreh SS の総説論文(1985年,下記の要旨参照)に述べられているように、以前から異なる病名で発表されていました。その第一報は、日本における 1971年報告の「桐沢型ブドウ膜炎」症例です。
論文名「網膜動脈周囲炎と網膜剥離を伴う特異な片眼性急性ブドウ膜炎について
東北大学 浦山 晃 先生,他が ARN などを伴う6症例を「桐沢型ブドウ膜炎」と名づけ、1971年 報告されました(臨床眼科 25(3):607-619,1971)。患者の発症時期は1959年(症例1)から1969年(症例6)迄です。英語論文でなかったため、その後日本の研究者が下記の病名で世界に紹介しました。
Kirisawa-type uveitis (Hayasaka S,他 1983年)
Kirisawa’s uveitis (Saga U,他 1983年)
Kirisawa-Urayama type uveitis (Usui M,他 1988年, Iizuka Y,他 1999年)
病名についての経緯、国内の論文、英語論文については、
ブログ second opinion 内の「Acute retinal necrosis (ARN) syndrome」関連エントリー
  日本のARN 症候群の特徴
    http://infohitomi.biz/archives/000037.html
  HSVによるARN 症候群の再発と誘因
    http://infohitomi.biz/archives/000038.html
  両側性 ARN syndrome
    http://infohitomi.biz/archives/000039.html
をご覧下さい。
J Fr Ophtalmol. 2004 Sep;27(7):795-800.
単純ペルペスウイルス 2型による髄膜脳炎を伴う両眼性 ARN 症候群. 1症例の報告
Bilateral acute retinal necrosis syndrome associated with meningoencephalitis caused by herpes simplex virus 2. A case report
Cardine S, Chaze PA, Bourcier F, Amara N, Prevost G, Ruhomauly H, Garandeau C, Maisonneuve L, Benzacken L.
Service d’Ophtalmologie, Centre hospitalier Robert Ballanger, Aulnay sous Bois.
序文: Acute retinal necrosis (ARN) 症候群は、ほとんどのケースで予後不良となる、まれなウイルス性疾患です。進行性網膜壊死、閉塞性血管炎、ときに眼外病変を伴う眼炎症を特徴とします。
症例報告: 症例は脳血管障害が疑われて紹介受診となった 62歳女性例です。眼科学的検査にて、広範な網膜壊死による重度の両眼視力障害がありました。前房水と脳脊髄液の PCR検査によって、単純疱疹ウイルス 2型による髄膜脳炎を伴う ARN 症候群と確定診断されました。腰椎部分の脊柱管狭窄に合併した疼痛のためステロイド薬を髄腔内注射したあと、単純疱疹ウイルス 2型が再活性化 (IgG+ , IgM-) したものと推測されました。治療として、アシクロビルの静脈内注射を 3週間行いました。4ヶ月後、両眼の網膜剥離を来たしました。
考案と結論:単純疱疹ウイルス 2型によるARN 症候群は、潜伏感染中のウイルスが神経系疾患の治療歴を有する患者で再活性化したり、ウイルスの先天性感染により発症することが多い。両側発症と合併症のリスクを減らすために抗ウイルス薬治療を早期に始めなければなりません。
J Fr Ophtalmol. 2004 May;27(5):538-46.
壊死性ヘルペス性網膜炎
Necrotic herpetic retinitis
Fardeau C.
Service d’Ophtalmologie, Hopital Pitie-Salpetriere, 91, boulevard de l’Hopital, 75013 Paris.
壊死性ヘルペス性網膜炎の診断は臨床的な根拠により、緊急で適切な静脈内および硝子体内治療を促すように行われます。ヘルペスウイルス物質の同定に際して、眼内検体に対するPCR法が最も成功します。単純疱疹ウイルスや帯状疱疹ウイルスによって起こる典型的な acute retinal necrosis syndrome および 正常免疫能患者や免疫能低下状態の患者に見られる異なる臨床病型について記述しました。鑑別診断として、トキソプラズマ症、梅毒、眼内リンパ腫によって起こる非典型的な網膜壊死所見を含みます。眼内検体は原因診断を確定するために役立ちます。急性期の治療戦略と予防治療について記述しました。臨床的な結果については、網膜壊死の拡大を阻止するような早期の適切な治療法が影響するようです。
J Fr Ophtalmol. 2004 Mar;27(3):223-36.
壊死性ヘルペス性網膜症の原因ウイルスと治療
Viral cause and management of necrotizing herpetic retinopathies
Tran TH, Bodaghi B, Rozenberg F, Cassoux N, Fardeau C, LeHoang P.
Service d’Ophtalmologie, Hopital Pitie Salpetiere, 47-83, boulevard de l’Hopital, 75013 Paris.
目的: 壊死性ヘルペス性網膜症の原因ウイルスと治療を研究する
方法: 1997年 3月から 2001年 6月までの期間中、急性網膜壊死 (acute retinal necrosis ARN) または、進行性外層網膜壊死 (progressive outer retinal necrosis PORN) と診断された患者の診療録を後向き調査した。PCR検査ないし眼内抗体産生の検出法による原因ウイルス決定のため、33症例から眼内検体を採取した。
結果: 平均年齢は 43.4歳。ヘルペスウイルス・ゲノムは 29症例 (80.5%) で同定された。ARN 群 (32 症例, 38 眼) では、単純疱疹ウイルス(HSV)DNA が 11 症例 (34.4%)で発見された。水痘帯状疱疹ウイルス(VZV) は 9症例 (28.1%), サイトメガロウイルス (CMV) は 4症例 (12.5%)であった。1症例 (3.1%)は Epstein-Barr ウイルス (EBV) 感染症であった。ARN 群では、初回検査時に 6症例が両眼性であり、経過中両眼性となった症例は 4症例であった。PORN 群 ( 4症例, 8 眼)では、網膜炎は両眼性であり、全例で VZV DNA が検出された。2症例はアシクロビル acyclovir 静脈注射, 6症例 フォスカルネット foscarnet 単独治療, 10症例 foscarnet + acyclovir 静脈注射, 18 症例は foscarnet 静脈注射とガンシクロビル ganciclovir 硝子体注射にて治療を行った。壊死性ヘルペス性網膜炎の合併症として、白内障 (26%), 視神経萎縮 (23.9%), 網膜剥離 (17.4%) であった。最終視力は 47.8% の症例で 0.1以下であった
結論: 病気の進行度と予後は、HSV, VZV, CMV によって起こるヘルペス性壊死性網膜炎では異なる可能性があるので、原因ウイルスを決定することは重要である。視力予後は、重点的な抗ウイルス治療により改善するが、合併症が発生すると視力不良となる。
J Fr Ophtalmol. 2004 Jan;27(1):7-13.
急性網膜壊死: 22症例の臨床像, 治療, 予後
Acute retinal necrosis: clinical presentation, treatment, and prognosis in a series of 22 patients
Morel C, Metge F, Roman S, Scheer S, Larricart P, Monin C, Laroche L.
Centre Hospitalier des Quinze-Vingts, Paris.
目的: 急性網膜壊死の診断例における臨床的結果と内科的治療について評価する
対象と方法: 1993年から2000年までの間に急性網膜壊死 22症例 が当科に紹介となった。臨床経過、最初の臨床症状から診断にいたるまでの遅れ、微生物学的プロフィール、治療、合併症について後向き調査を行った。
結果: 全症例が硝子体内炎症を呈していた; 網膜炎は症例の 82% に見られた。6症例 (27%) では、それでも診断が遅れ、初回眼科診察から抗ウイルス治療開始まで平均 5.5日の遅延があった。19症例に対して検査を実施し、ウイルス学的には、このうち 16症例で診断確定となった: 帯状疱疹ウイルス 11例, 単純疱疹ウイルス 1型 3例, 単純疱疹ウイルス 2型 1例, サイトメガロウイルス 1例 であった。9症例ではアシクロビルとフォスカルネットの併用治療を行い、13症例はアシクロビルの単独治療であった。アシクロビルを投与された 16症例中1例では、治療後 2日目には効果が見られず、フォスカルネット追加後に治癒した。治療終了時に 1症例にのみ再発が見られた。11症例に網膜剥離が発症し、全例増殖性硝子体網膜症を併発した。このうち、手術療法を受諾した 10症例中 7例は手術が成功した。22症例中 11例が最終視力 0.1まで、2例は 0.5まであった。
結論: 自験例では、アシクロビル acyclovir 単独治療は大部分の症例において十分有効であった。抗ウイルス治療を行っても、急性網膜壊死の予後は不良である。網膜剥離が主要な合併症である。
Hayreh SS は、1985年当時、acute retinal necrosis syndrome を1つの「眼疾患単位」と捉え、78症例に及ぶ症例報告を収集し、詳細な臨床的記述、病因、用語についてのレビューを行った。
Dev Ophthalmol. 1985;10:40-77.
So-called ‘acute retinal necrosis syndrome’–an acute ocular panvasculitis syndrome.
Hayreh SS.
抄訳: 汎ぶどう膜炎、網膜血管炎、網膜壊死 (続発性網膜剥離を高率に伴う)、高頻度にみられる視神経萎縮を特徴とする急性眼疾患は、これまで異なるエポニム eponym で報告されており、1971年の(訳者による追加: 浦山先生の) 第一報(訳者による追加: 6症例)以降の合計74症例 (103眼)の報告例と著者の発表症例 4例を合わせた 78症例 (107眼) をレビューした。基本病理像は、虹彩、脈絡膜、網膜、視神経乳頭の急性血管炎であり、脈絡膜、網膜、視神経乳頭の血管閉塞を来たす: 臨床像は汎ぶどう膜炎を伴うこれらの組織の虚血性病巣である。網膜壊死は本疾患にみられる多彩な病変の1つに過ぎないので、acute retinal necrosis syndrome と呼ぶよりも acute ocular panvasculitis syndrome (訳者による追加: 急性眼汎血管炎症候群) と呼称した方が相応しいと考える。 (訳者による追加: と著者 Hayreh SS は述べている。当時の研究では) 汎血管炎の原因は依然としてミステリーである。

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2005/06/08 @ 15:27

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