evidence-based medicine

Archive for 6月 2005

網膜分離: X染色体連鎖性など

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網膜分離症の新分類
Retina. 1995;15(4):282-5.
A new classification of the retinoschises.
Madjarov B, Hilton GF, Brinton DA, Lee SS.
Department of Ophthalmology, University of California Medical Center, San Francisco, USA.
背景: 1960年代に網膜分離症の2つの分類法が発表されました。網膜分離症を来たす病気についての知識が飛躍的に増加し、分類のアップデートが必要です。
方法: 新分類は、著者の臨床経験、文献の広範なレビュー、20名の硝子体網膜専門医に対する調査に基づきます。
結果: 網膜分離症は 3型あります: 変性性、遺伝性、続発性変性性網膜分離症 degenerative retinoschisis は最も多く、多くの発表があります。よく知られている X染色体連鎖性網膜分離 に加えて、常染色体劣性ないし常染色体優性の遺伝形式の家系もあります。続発性網膜分離 は、いろいろな程度はありますが、少なくとも 18の眼疾患があります。
結論: 網膜分離症の多くのタイプは、今回の主要カテゴリー内に分かれます。タイプの多様性は "the retinoschises" と複数形を用い強調されます。
(論文要旨、および邦訳はここまで)
このうち、「X染色体連鎖性網膜分離」は、細胞間の接着および燐脂質との結合に関与する XLRS1 遺伝子 の異常により発症します。日本人の家系においても証明されております。また、この遺伝子は遺伝性黄斑ジストロフィという病気にも関係するようです。
詳しいページ「アイケア名古屋 第24号 2/01 2005」
    http://eyecare-nagoya.com/eyecare/news/02-01-05/main.html
「先天網膜分離症 若年網膜分離 X-linked retinoschisis,
congenital retinoschisis, juvenile retinoschisis RS1, XLRS1 MIM 312700」の解説をご覧下さい。

先天網膜分離:診断の要点診断に大切なのは病歴と眼底検査である.「両眼の矯正視力が不良だが、いつ発生したのか不明である」という小学校低学年の男児で黄斑部を精査するとみつかることがある.・・・

また、
「Retinoschisis, Juvenile」(日本語病名: 若年網膜分離)
    http://www.emedicine.com/oph/topic639.htm
Last Updated: October 4, 2004
Author: Mi-Kyoung Song, MD, Clinical Instructor, Department of Ophthalmology, Eye Associates of New Mexico
Coauthor(s): Kent W Small, MD, Director of Macular Disease Center, Director of Retina Division Research, Professor, Department of Ophthalmology, University of California at Los Angeles Medical Center
によると、
"X-linked juvenile retinoschisis", "XJR", "congenital cystic retinal detachment", "congenital vascular veils in the vitreous", "vitreous veils" とも呼ばれた病気で、その有病率は、米国内では人口 5,000から 25,000人に 1人の頻度であり、他の国ではインドネシアや日本での発症があり、人種として、白人 Caucasian, チェロキー族 Cherokee Indian, アフリカ系アメリカ人 African Americans の症例が報告されています。
また、生後 3ヶ月頃には診断できますが、ほとんどのケースは就学前ないし学校での視力スクリーニング検査で異常を指摘されて、受診となります。
まれな常染色体性の家族発症例では、周辺部網膜の網膜分離は全例にみられ、中心窩の変化は半数ぐらいの症例に発見されます。
通常みられる X 染色体劣性 のタイプでは、主に、男子に発症し、
網膜中心窩の嚢胞のために、生後早い時期から中心視力が軽度障害されます。後に、中心視力障害は高度となり、黄斑変性のような症状となります。より重症のケースでは、内・外網膜層の両層に裂孔が発生し、網膜剥離を来たします。網膜剥離の発生頻度は 11% 程度です。少年 ヤングボーイに発生する硝子体出血の主原因です

Mortality/Morbidity: Early in life, the central vision usually is impaired mildly because of a cyst in the fovea. Later, the central vision can become impaired more markedly, resulting in symptoms similar to macular degeneration. More seriously, retinal detachments can occur when there are holes in both the inner and the outer retinal layers. Incidence is as high as 11%. XJR is the most common cause of vitreous hemorrhage in young boys.

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2005/06/21 at 15:22

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水痘性角膜炎の特徴

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水痘帯状ペルペス感染症の初発症状は「水痘」です。ウイルス再活性化による中・高齢者の再発症状は「帯状疱疹」です。ごくまれではありますが、水痘罹患後に角膜炎やぶどう膜炎が起こることがあります。水痘の皮疹出現に遅れて発症することが特徴の1つです。
水痘性円板状実質型角膜炎
Am J Ophthalmol. 1991 May 15;111(5):575-80.
Varicella disciform stromal keratitis.
Wilhelmus KR, Hamill MB, Jones DB.
Department of Ophthalmology, Cullen Eye Institute, Baylor College of Medicine, Houston, Texas.
急性水疱性発疹の発現後、1, 4, 4, 8, 10週後に円板状実質型角膜炎を呈した 5症例(それぞれ、 26, 4, 6, 13, 7 才) の治療経験を報告する。血清学的検査では、 2症例において水痘の初感染が確認され、他の感染源が否定された。コルチコステロイド点眼液によって、治療初期には改善がみられたが、 3症例では、帯状疱疹性角膜炎のような再発性角膜炎に進展した。本症例と過去の報告例から、水痘帯状疱疹ウイルスは円板状実質型角膜炎の 1原因であり、この角膜炎は、初発の皮膚発疹が消失して数週ないし数ヶ月経過後に発症、再発する可能性がある
水痘性角膜炎の遅発性発症
Cornea. 1992 Sep;11(5):471-4.
Delayed onset of varicella keratitis.
de Freitas D, Sato EH, Kelly LD, Pavan-Langston D.
Department of Ophthalmology, Harvard Medical School, Boston, MA.
水痘は米国では最も多い感染症の1つであるが、全身および眼部合併症はまれである。著者らは水痘の急性相が過ぎてから、1か月と 2か月後 に円板状角膜浮腫を来たし "小"樹枝状 microdendritic 角膜炎に進展した 1症例を報告する。培養検査は陰性で、血清学的検査では水痘帯状疱疹ウイルスの抗体は陽性であったが、単純疱疹ウイルス抗体は陰性であった。本症例と文献的な考察から、角膜炎の遅発性発症は、水痘による角膜合併症として典型的なものと考える。

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2005/06/17 at 20:45

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ヒトヘルペスウイルス

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100種類以上のヘルペス属ウイルスが存在しますが、人に感染するものは下記の 8種類のヘルペスウイルス (human herpes virus HHV) です。

HHV-1: HSV-1 () 単純ヘルペス
      腰から上の感染症で検出されることが多い
      (口唇ヘルペス、角膜炎、ARN 症候群、脳炎、疱疹性ひょう疽など)
HHV-2 HSV-2: () 単純ヘルペス
      腰から下の感染症で検出されることが多い
      (泌尿生殖器のヘルペスなど)
      ただし、日本国内の眼部 ARN 症候群ではHSV-2が多い.
HHV-3: VZV  () 水痘帯状ヘルペス
HHV-4: Epstein-Barr virus
HHV-5: cytomegalovirus CMV サイトメガロウイルス
HHV-6:
HHV-7:
HHV-8:

注: () neurotropism 神経親和性 (神経系組織内に侵入したり、同組織内で生存したりする能力があること。主に、ウイルスが神経組織に感染する能力を有するときに用いる用語です) のあるウイルスです。HSVとVZVは、主に、知覚神経節に潜伏感染する能力があります。
【参考文献】
Int Ophthalmol Clin. 2000 Spring;40(2):85-109.
Advances in diagnosis and management of herpetic uveitis.
Gaynor BD, Margolis TP, Cunningham ET Jr.

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2005/06/11 at 20:50

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両側性 ARN syndrome

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ARN syndrome 両眼発症例について、最近の論文と発症頻度をお知らせいたします。
日本眼科学会雑誌 1997 Mar;101(3):243-7.
A study of 44 patients with Kirisawa type uveitis
Ichikawa T, Sakai J, Yamauchi Y, Minoda H, Usui M.
Department of Ophthalmology, Tokyo Medical College, Japan.
1983年 1月から1995年 2月までに東京医科大学病院ぶどう膜炎外来を受診した桐沢型ぶどう膜炎 (KU) の44例55眼を対象として、詳細な臨床的検討が行われている。両眼性の頻度については、本論文の [結果 2. 臨床像] の 3) 罹患眼を引用します。

3) 罹患眼については、VZV-KU の31例中 6例が両眼性であったのに対して、HSV-KU の 13例はすべて片眼性であった。両眼性 VZV-KU では 1眼が発症して 1 から 2か月後に他眼に発症した.

[追記: 2005/6/21] 上記医療機関における治療マニュアルの一部を引用いたします。
典拠:「臨床眼科 増刊号 vol.54 no.11 2000. 医学書院」
坂井潤一: 感染性ぶどう膜炎の治療. pp299-301.

==========================
表2 治療マニュアル(代表例)
==========================
 
桐沢・浦山型ぶどう膜炎
1) 病因ウイルスが HSV の場合
アシクロビル         30mg/kg/日 (2~3週間)
プレドニドロン       60mg/日から漸減
 小児用バファリン®    1錠/日
 
2) 病因ウイルスが VZV の場合
アシクロビル         30mg/kg/日 (2~3週間)
 インターフェロン-β  300万 IU/日 (2週間)
プレドニドロン       60mg/日から漸減
 小児用バファリン®    1錠/日
 
*硝子体手術を必要とすることが多い。

日本眼科学会雑誌. 1984 Jan;88(1):22-51.
Clinical aspect of uveitis
Urayama A, Sakuragi S, Sakai F, Koseki T, Tanaka Y, Yamaki K, Nakayama R, Hirano Y, Sakuraba H, Takahashi H, et al.
浦山 晃先生の特別講演論文「葡萄膜炎の臨床」にて、日本における桐沢型ブドウ膜炎症例のアンケート調査成績が発表されている。昭和58年 (1983)の学会報告に合わせて全国の大学、医療機関に対してアンケート調査が行われたが、記載不足等の理由で保留した症例を除く、国内症例 107症例 の臨床像(一部)は、
性別: 男 65症例, 女 42症例
年齢: 平均 40才 (10才から74才)
患側: 片眼 97症例, 両眼 10症例
であった。
【他論文】
文献番号 #006 に記載されている薬剤の用法用量については、原文要旨(英文)も併記しました。ドイツ語圏の処方箋の略語は、
  医学用語辞書 処方略語 (ABC順 一部抜粋)
をご覧下さい。なお、論文タイトルは網膜動脈壊死となっていますが、当方の転記ミスではありません。
#006) Klin Monatsbl Augenheilkd. 1994 Apr;204(4):235-40.
Bilateral acute retinal artery necrosis–healing of the second affected eye
Kalman A, Vogt M, Bernasconi E, Gloor B.
Augenklinik, Universitatsspitales Zurich.
背景: acute retinal necrosis syndrome (ARN) は水痘帯状疱疹ウイルスまたは単純疱疹ウイルスによっておこる。しかしながら、罹患眼の治療や他眼の発症予防のための抗ウイルス薬の投与量と投与期間はいまだ明確でない。ステロイド治療のタイミングを検討し、また、他眼のARN 症候群の治療が奏効した症例を提示する。
症例: はじめの罹患眼: 免疫能低下のない(HIV 陰性) 27才の症例は、発熱後2ヶ月して右眼に急性虹彩炎を来たした。14日後、ARN 症候群がみられた。患者は、
アシクロビル 1回量 750mg 一日 3回静脈内投与 6日間
Acyclovir 3 x 750 mg i.v. for 6 days
その後、1回量 200mg 一日 5回経口投与 5日間
5 x 200 mg orally for 5 days
の治療を受けた。患者は治療にもかかわらず、手術不能の網膜剥離に至った。
他眼: 8日後、左眼に限局した網膜壊死が現れた。水痘帯状疱疹 DNA (PCR法) が前房水から検出された。アシクロビル治療は、
1回量 1.1g 12時間毎から 1.0g 8時間毎に増量した。
from 1.1 g q 12 h (2 x 15 mg/kg/d) to 1.0 g q 8 h (3 x 12.5 mg/kg/d).
4週後に静脈内治療から内服治療 1回量 800 mg 一日 5回 12週間に変更した。
oral therapy of 5 x 800 mg for 12 weeks
その後、1回量 400 mg 一日 5回に減量し、12週間続けた。
reduced to 5 x 400 mg for another 12 weeks
コルチコステロイド薬の内服治療は、第11病日から始め、初回投与量プレドニゾロン 100mg/日として、ゆっくり投与量を漸減し、18週間投与した。
100 mg Prednisone, in slowly reducing dosage during 18 weeks
6ヶ月後には、視力1.0で完全に回復した。
結論: 他眼の病気は急性虹彩炎と続発性緑内障から始まった。この症状は水痘帯状疱疹ウイルスまたは単純疱疹ウイルスによっておこる acute retinal necrosis syndrome の特徴的な前駆症状ですが、網膜所見は最初にはみられませんでした。上述のような長期間の治療が必要であったか、否かは1ケースの症例報告のため明確ではありませんが、著者らは、追加データが明らかになるまで、大量投与法を推奨します。
[追記 2005/7/14]バラシクロビル と アシクロビル
valacyclovir is a prodrug of acyclovir
塩酸バラシクロビル (商品名 バルトレックス ®)は、従来の抗ウイルス薬 「アシクロビル (商品名 ゾビラックス ®)」のプロドラッグで、経口吸収性がよくなっています。バルトレックス服用後、消化管より吸収され、活性代謝物 アシクロビルになります。単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス治療薬です。

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2005/06/11 at 17:25

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HSVによるARN syndrome の再発と誘因

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単純ヘルペスウイルスによる Acute retinal necrosis syndrome (ARN 症候群): 再発例と再発の誘因
HSVの再発は、初感染(多くは、感染時は無症状)後、数ヶ月、数年、数十年後におこることがあります。その大部分は、初感染後に潜伏したウイルスの再活性化によるもので、外界のウイルスによる再感染はごくまれといわれています。
ウイルス再活性化の誘因として、

高体温 hyperthermia
紫外線曝露
月経
外傷
コルチコステロイド(ステロイド薬)
免疫抑制薬(コルチコステロイド以外)
手術
角膜手術用エキシマレーザー(EXIMER)
免疫不全状態
緑内障治療薬 ラタノプロスト点眼液 (商品名 キサラタン)
妊娠 ?? (文献 #007)

があります。これらの再発( HSV再活性化)の誘因は、角膜炎や口唇ヘルペスの症例でよく知られてますが、最近、妊娠中に ARN を発症した症例報告があり、論文著者は妊娠中の細胞性免疫能変化に注目しています。
【参考文献】
Int Ophthalmol Clin. 2000 Spring;40(2):85-109.
Advances in diagnosis and management of herpetic uveitis.
Gaynor BD, Margolis TP, Cunningham ET Jr.
【アシクロビルによる予防的治療】
ランダム化二重盲検比較対照試験 randomized, double-blind, placebo-controlled trial による アシクロビル のHSV 再発予防効果.
N Engl J Med. 1998 Jul 30;339(5):300-6.
Acyclovir for the prevention of recurrent herpes simplex virus eye disease. Herpetic Eye Disease Study Group.
No authors listed
HSV による眼病変を有した 703名の免疫機能が正常の患者をアシクロビル 一日 400mg×2回 投与群と偽薬(プラセボー)群に無作為に割付け、1年間内服を続け、その後 6か月間は両群無治療で観察のみ行ったところ、HSV による実質性角膜炎などの眼病変と口唇ヘルペスの再発はアシクロビル投与群において有意に少なかった。
また、アシクロビルには角膜手術後の再発予防効果も認められている。
Cornea. 1994 May;13(3):232-6.
A prospective randomized trial of oral acyclovir after penetrating keratoplasty for herpes simplex keratitis.
Barney NP, Foster CS.
Harvard Medical School, Boston, Massachusetts.
HSV 角膜炎に対する全層角膜移植術後にアシクロビルを内服した群は術後に角膜ペルペスの再発はなく、非投与群に比べて有意に再発を抑制し、また、移植角膜片の機能不全は非投与群に比べて少なかった。
以下に、最近の報告例を列記いたします。
#001) 49才男性. HSV 1型脳炎 2年後 片眼 ARN症候群発症(同一ウイルスによる、再発). 脳症の再発なし。
網膜ニューロンに HSV 1型の潜伏感染していたと考えられる。

This case suggests that following encephalitis retinal neurons may function as a reservoir for latent HSV-1, that can be reactivated to cause ARN in situ several years later.

#002) ARN症候群の同一眼での再発 2症例. (症例 1) 60才男性 左眼, 13年後 (症例 2) 49才女性 右眼, 8年後. アシクロビルで完治. 再発部位は以前の病巣と関連がないところであった。
#003) 21年後に他眼にARNS症候群を発症し、単純ヘルペス脳炎を併発した HSV 2型の1症例: 脳炎と右眼 ARN が左眼から 21年後発症. 既往歴: 8才のとき、左眼の ARNが疑われた。性器ヘルペスはその後も再発していた.
以下の2論文は硬膜外・髄腔内ステロイド注射の副作用
#004) 硬膜外ステロイド注射後のARN 発症.
背部痛のため、硬膜外ステロイド注射を受けた 2症例に ARN 症候群発症. 受診が遅れた 1例は、両眼の続発性裂孔原性網膜剥離と黄斑パッカーを来たした。
患者は硬膜外ステロイド注射治療に際して、本症候群の発症の可能性について副作用の警告を受け、注射後に光視症、光過敏症 (羞明) 、かすみ、これまでになかった飛蚊症を自覚したときに報告するように説明を受けるべきである。

Patients should be warned about this possibility and advised to report should photopsias, photosensitivity, blurred vision, or new floaters develop after treatment.

#005) 腰椎部分の脊柱管狭窄に合併した疼痛のためステロイド薬を髄腔内注射したあと、単純疱疹ウイルス 2型が再活性化 (IgG+ , IgM-) したものと推測された1症例.
エントリー「Acute retinal necrosis 桐沢型ブドウ膜炎」
  http://www.qqiac.com/archives/000120.html
をご覧下さい。
【妊娠と ARN 症候群】
妊娠中発症のARN 症候群の報告数は これまで2例程度である。
下記論文の結論の1つは「非特異的刺激物質 (mitogen) に対するリンパ球の反応低下が ARN 症候群を併発した妊婦にみられ、出産後にはこの反応は正常化した。」ということである。正常妊娠にみられる免疫反応の変化と ARN 症候群の患者に見られる変化との類似性を指摘した論文である。
妊娠中の単純ヘルペスウイルス性 acute retinal necrosis.
#007) Eur J Ophthalmol. 2003 Aug-Sep;13(7):662-5.
Herpes simplex virus acute retinal necrosis during pregnancy.
Chiquet C, Thuret G, Poitevin-Later F, Gain P, Najioullah F, Denis P.
Department of Ophthalmology, Edouard Herriot Hospital, Lyon, France.
妊娠は免疫応答に変化を来たすので、著者らは妊娠によって感染症の発病が促進されるか確かめるために ARN を合併した妊婦の免疫機能を調査した。
HSV 1型は、免疫機能の正常な患者、免疫能が低下した患者ともに ARN を惹起させる。ARN の病態生理はよく解っていないが、免疫異常が本症候群患者で指摘されている。
症例報告:
34歳, 女性. 妊娠 5.5か月. 1999年 1月、4日前から左眼の視力低下を自覚。徐々に悪化した。一般診察では、口唇皮膚や外陰部に潰瘍はなかった。妊娠経過も順調であった。左視力は光覚弁で、細隙灯顕微鏡検査では、中等度の虹彩炎と肉芽腫性角膜後面沈着物がみられ、眼圧は 18mmHgであった。眼底鏡による検査では、著明な硝子体炎、網膜血管周囲の散在性網膜出血、網膜血管炎、周辺部網膜剥離がみられた。癒合した周辺部網膜の網膜壊死が網膜全体に拡大している片側性 ARN と診断された。前房水の PCR 検査にて、HSV 1型のDNAが検出された。同一サンプルからはHSV 2型, VZV, CMV は検出されなかった。産婦人科的検査は正常で、特に、子宮頚部に病変なく、HSV 1型のPCR 検査は陰性であった。超音波検査やモニターにおいて、胎児は正常であった。神経学的検査、脳MRI は正常で、脳脊髄液のPCR検査 (HSV 1,2型)などは陰性であった。
免疫機能検査:
ステロイド治療開始前の診察時と出産 1年後でステロイド治療が行われていない時期との末梢血の検査成績を【表 1】に示した。(表 Table は省略)
リンパ球幼若化試験では、ConA (concanavalin A), PHA (phytohemagglutinin), PWM (pokeweed mitogen)の 3種の非特異的刺激物質(mitogen)に対するリンパ球の反応は有意に低下していた (paired t-test, それぞれ p=0.042, 0.047, 0.035)。リンパ球数、T 細胞:CD3, CD4, CD8, B細胞:CD19, NK細胞 は両検査時点で正常範囲内であった。
抗ウイルス治療は、導入時の用量として アシクロビル注射液 30 mg/kg/d, 10日間, アスピリン 125mg/d, および 酢酸プレドニゾロン内服薬 1mg/kg/d を使用した。ステロイド点眼と散瞳薬も併用した。3か月後、視力は不良で(光覚弁程度), 視神経萎縮と網膜剥離を呈していた。健康児を出産、先天性ヘルペス感染症はみられなかった。抗ウイルス治療は 12か月後に中止した。2002年 12月までには他眼の発症はなかった。
考案: Rochat C ら(1994年) は、徹底的な文献レビューより ARN 症例 216例中、16% に細胞性免疫能の低下 所見を発見した。病気の重症度やタイプは、免疫障害に依存しているようである。
妊娠中には、正常者であっても mitogenに対するリンパ球の反応は一時的に低下し細胞性免疫能の障害が起こるとされるが、この反応の変化は ARN 症候群の患者に見られる変化といくつかの類似性がある。
下記の Shiraki K らの論文は、妊婦に発症した acute retinal necrosis の最初の報告例であるが、妊娠中の免疫能検査は実施されていない。また、要約にはウイルスタイプの記載がない。
Am J Ophthalmol. 1998 Jan;125(1):103-4.
Acute retinal necrosis late in the second trimester.
Shiraki K, Moriwaki M, Ataka S, Henmi K, Miki T, Kanaoka Y.
Department of Ophthalmology, Osaka City University Medical School, Japan.
目的: 妊娠中の acute retinal necrosis 患者治療例について報告する
方法: 24歳、妊娠23週に acute retinal necrosis と診断された。妊娠25週から アシクロビルとインターフェロン治療が開始された。妊娠26週の時、硝子体手術が施行された。
結果: 壊死網膜は術後 3週までに瘢痕増殖 gliotic 組織となった。患者視力は 左眼 0.5 まで改善した。
結論: アシクロビルとインターフェロン治療ののち手術治療を行うことで部分的に患者視力を回復させることができた。また、胎児の発育にも影響はなかった。
[文献名]
#001) Ophthalmic Surg Lasers. 2002 May-Jun;33(3):250-2.
Unilateral acute retinal necrosis occurring 2 years after herpes simplex type 1 encephalitis.
Kim C, Yoon YH.
Department of Ophthalmology, Asan Medical Center, College of Medicine, University of Ulsan, Seoul, Korea.
# 002) Am J Ophthalmol. 2001 May;131(5):659-61.
Same eye recurrence of acute retinal necrosis syndrome.
Matsuo T, Nakayama T, Baba T.
Department of Ophthalmology, Okayama University Medical School, Okayama City, Japan.
#003) Am J Ophthalmol. 1996 Dec;122(6):891-2.
Twenty years’ delay of fellow eye involvement in herpes simplex virus type 2-associated bilateral acute retinal necrosis syndrome.
Schlingemann RO, Bruinenberg M, Wertheim-van Dillen P, Feron E.
Department of Ophthalmology, University of Amsterdam, The Netherlands.
#004) Am J Ophthalmol. 2003 Jul;136(1):192-4.
Acute retinal necrosis following epidural steroid injections.
Browning DJ.
Charlotte Eye, Ear, Nose, and Throat Associates, Charlotte, North Carolina, USA.
#005) J Fr Ophtalmol. 2004 Sep;27(7):795-800.
Bilateral acute retinal necrosis syndrome associated with meningoencephalitis caused by herpes simplex virus 2. A case report
Cardine S, Chaze PA, Bourcier F, Amara N, Prevost G, Ruhomauly H, Garandeau C, Maisonneuve L, Benzacken L.
Service d’Ophtalmologie, Centre hospitalier Robert Ballanger, Aulnay sous Bois.
#007) Eur J Ophthalmol. 2003 Aug-Sep;13(7):662-5.
Herpes simplex virus acute retinal necrosis during pregnancy.
Chiquet C, Thuret G, Poitevin-Later F, Gain P, Najioullah F, Denis P.
Department of Ophthalmology, Edouard Herriot Hospital, Lyon, France.

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2005/06/11 at 13:54

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acute retinal necrosis syndrome, HSV-2

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acute retinal necrosis syndrome を世界で最初に報告(1971年) された東北大学 浦山 晃 先生は 仮に「桐沢型ブドウ膜炎」と名づけました。
エントリー「Acute retinal necrosis 桐沢型ブドウ膜炎」をご参照下さい:
  http://www.qqiac.com/archives/000120.html
残念ながら、当時は眼内のウイルス抗原を証明する有力な検査法がなかったため、本疾患は原因不明のものとされました。また、権威ある英語医学専門雑誌に本論文を投稿されなかったこと、外国人には理解困難な病名であったり (病名として人名を付ける際に、論文の筆頭著者であるご本人や共著者ではなく、上司である当時の眼科講座の教授名を採用されました)、 その後の眼科研究者の一部が病名・論文タイトルとして ARNS の方だけを引用したり、日本の学者でも"浦山論文"を自らの論文の中で強くアピールしなかったため、一時期、本論文の価値や独創性を知る眼科医は国内でも少くなったことがありました。
"浦山論文"の考案には「おそらくこのような型のブドウ膜炎を経験された方はほかにもあるだろう。特にこの軽症型、頓挫型、両眼型と見なすべきものがあれば、われわれの考えはある程度変更を余儀なくさえれるかも知れないので、各位のご教示をお願いしたい。」と記載されています。また、特別講演論文「葡萄膜炎の臨床」の中で自験例を桐沢型ぶどう膜炎として報告するに至った経緯が述べられています。

いまから25年前の昭和34年(1959), 当時東北大学に勤務しておった私は, 24歳美容師の左眼に急激に起こった葡萄膜炎で, それまで経験したことのない症状経過を示した1例に遭遇した. これを最初の契機としてその後、同様なる症例が折にふれて積み重ねられ, 10年間に計6例となった. 文献上, この種の眼病変そのままに慨当する記載が発見されなかったので、昭和46年(1971) 「網膜動脈周囲炎と網膜剥離を伴う特異な片眼性急性ブドウ膜炎について」という表題で「臨床眼科 25巻 3号 桐沢長徳教授退官記念論文集 607~619頁」に浦山晃, 山田酉之以下共同研究者の連名で発表した. その際とりあえず「桐沢型葡萄膜炎」という仮称を与えて報告したのが本病の展開の発端である。

日本眼科学会雑誌. 1984 Jan;88(1):22-51.
Clinical aspect of uveitis
Urayama A, Sakuragi S, Sakai F, Koseki T, Tanaka Y, Yamaki K, Nakayama R, Hirano Y, Sakuraba H, Takahashi H, et al.
その後、外国において acute retinal necrosis syndrome の患者眼内から、水痘帯状ペルペスウイルスが初めて検出されました。さらに、単純ヘルペスウイルスによる本症候群を国内の眼科医が証明し、その後も続々と新知見・治療法が発表されました。
以下に、まれな本疾患の疾患背景を理解する上で、重要な最近の論文をいくつか引用、抄訳いたします。
以下は 単純ヘルペスウイルス 2型 HSV-2 による ARN 症候群に関する3か国の報告論文です。
【日本】
"単純ヘルペスウイルスによる acute retinal necrosis syndrome において、日本では 単純ヘルペスウイルス 2型が多い"
Am J Ophthalmol. 2000 Mar;129(3):404-5.
High prevalence of herpes simplex virus type 2 in acute retinal necrosis syndrome associated with herpes simplex virus in Japan.
Itoh N, Matsumura N, Ogi A, Nishide T, Imai Y, Kanai H, Ohno S.
acute retinal necrosis syndrome (訳者注: 以下の邦訳文では acute retinal necrosis 症候群と一部を日本語でも表示しました)は、1971年日本人眼科医らによって最初に眼科学の分野に記載された 視覚に著しい障害を残す devastating 症候群です。本症候群は単純ヘルペスウイルス(訳者注:単純疱疹ウイルス HSV と表示します) と水痘帯状ペルペスウイルス(訳者注: 水痘帯状疱疹ウイルス VZV と表示します) によって起こされることが証明されました。
米国ぶどう膜炎学会 American Uveitis Society 基準に該当する acute retinal necrosis 症候群 16 症例は、1993年から1999年にかけて横浜市立大学病院にて入院治療を行った。
16症例中 7例の前房水ないし硝子体からPCR法によって HSV 2型 のDNAが検出されたが、HSV 1型, VZV, Epstein-barr ウイルス(訳者注: EBVと略します), サイトメガロウイルス(訳者注: CMVと略します)については陰性であった。HSV-2 DNA陽性の症例は全例、女性で、平均年齢 36才 ( 14才から 52才)であった。逆に、VZV DNA は同様の検体・方法により、残りの 9症例から検出されたが、HSV 1型, HSV 2型, EBV , CMV については陰性であった。VZV DNA陽性の症例は女性 4例、男性 5例、平均年齢 60才 ( 50才から 68才)であった。HSV-2が真の原因ウイルスであることを確定診断するために、最近開発されたグリコプロテイン G を使用する型特異的抗体検出法 ( Gull Laboratories, Salt Lake City Utah) を用い、患者血清を調べた。
これらの感染が初感染であるか、再発であるか、抗 HSV 抗体のサブクラス(訳者注: IgM は初感染時, IgG は再発・再活性化時に上昇します)についても検査した。VZV DNA陽性の ARN 症候群患者は全例、抗 HSV-2 抗体が陰性であったが、HSV-2 DNA陽性の ARN 症候群患者は抗 HSV-2 抗体が陽性となり、抗 HSV-1 抗体陰性であった (Table 表 1)。抗 HSV 抗体陽性の ARN 症候群 14症例の血清HSV 抗のサブクラスは、IgG であった。
ほとんどの性器ヘルペスが男女ともにHSV 2型で起こる米国に比べて、日本ではHSV 2型による女性の性器ヘルペス有病率は 低い (34.5%) 。女性における HSV 2型 の血清陽性率も、米国 (27.8%) に対して 日本 (7.0%) であり、著しく低頻度である。HSV 2型感染症有病率が低いのは、日本国内の女性には抗 HSV-2 抗体陽性者が少ないからである。この疫学的背景から、日本では HSV 2型は単純疱疹ウイルスに関連した acute retinal necrosis syndrome の真の原因ウイルスと考えられる。
日本国内の女性にみられるヘルペス感染症ではHSV 2型が少ないのであるが、今回の著者らの研究により acute retinal necrosis 症候群では HSV 2型 の有病率が高いことが血清学的に証明された。HSV 2型患者全症例が、抗 HSV 1型 抗体を保有していない患者であり、HSV 2型は初感染のタイプではないが初めての感染症症状である。一方、日本では患者と同年代の女性の HSV 1型抗体陽性率は高い(60%-70%)。HSV 1型抗体を保有することにより、通常、HSV 2型感染症の重篤な発症を予防することが知られている。HSV 1型の初感染歴がない患者の眼部に HSV 2型が再発することは、acute retinal necrosis syndrome の臨床所見に関与する可能性がある。
日本と米国とのHSV 2型の病因性の違いやいろいろな集団におけるHSV 2型の宿主の感受性の違いについて、さらに遺伝子・生物学的研究を行うと、日本でacute retinal necrosis 症候群にHSV 2型が多い理由がわかり、本症候群のメカニズムが解明されることになるであろう。
TABLE 1. Prevalence of Herpes Simplex Virus Type-Specific Antibodies and Subclass of Nontype-Specific Antibodies
単純疱疹ウイルスの型特異的抗体および非特異的抗体サブクラスの頻度
[訳者注: 引用論文の表 1 に使用されている用語を訳し、患者眼内の房水または硝子体液の検査(PCR法)にてウイルスDNAが検出されたHSV 2型 と VZV を分けて表示しました]
単純疱疹ウイルス 2型 HSV-2 によるARN 症候群 7例

型特異的血清抗体
HSV-1 IgG           0
HSV-2 IgG           7
 
非特異的血清抗体
IgG                 7
IgM                 0

水痘帯状疱疹ウイルス VZV によるARNS 症候群 9例

型特異的血清抗体
HSV-1 IgG           7
HSV-2 IgG           0
 
非特異的血清抗体
IgG                 7
IgM                 0

【米国】
若年患者 acute acute retinal necrosis syndrome の原因としてのHSV 2型
Ophthalmology. 2001 May;108(5):869-76.
Herpes simplex virus type 2 as a cause of acute retinal necrosis syndrome in young patients.
Van Gelder RN, Willig JL, Holland GN, Kaplan HJ.
Department of Ophthalmology and Visual Sciences, Washington University Medical School, St. Louis, Missouri.
(要旨の要点)
ARN 症候群 10症例 を対象として原因ウイルスを調査したところ、HSV 2型は若年患者で最も多い原因ウイルスであり (平均年齢 21.2才, 標準偏差 10才, 範囲 17-39才)、一方、高年齢者では VZV がより一般的である (平均年齢 40.8才, 標準偏差 12.2才, 範囲 29-58才). 両者間には有意差があった (P= 0.033).
VZV は ARN 症候群の最も多い原因ではあるが、HSV 2型 HSV-2 は、特に若年患者においては重要な原因ウイルスである。
【フランス】
急性単純ペルペスウイルス2型網膜壊死の臨床的特徴
Am J Ophthalmol. 2004 May;137(5):872-9.
Clinical characteristics of acute HSV-2 retinal necrosis.
Tran TH, Stanescu D, Caspers-Velu L, Rozenberg F, Liesnard C, Gaudric A, Lehoang P, Bodaghi B.
Department of Ophthalmology, Pitie-Salpetriere Hospital, 47-83 Boulevard de l’Hopital, 75013 Paris, France.
(要旨の要点)
2つのヨーロッパ・センターから紹介された HSV 2型 HSV-2 による acute retinal necrosis 症候群 11症例 12眼 について後向き調査を行った。
両眼罹患例では最初に症状を来たした患側発病の年齢: 平均 36才 (10-57才)
女性 5例, 男性 6例. 全例、免疫不全者ではない。
既往歴:
 · 新生児ペルペス (n = 1)
 · ARN の既往 (n = 3)
 · 外傷 (n = 1)
 · ARN発症前のコルチコステロイド薬全身投与 (n = 3)
色素沈着を伴う網脈絡膜瘢痕は 3症例にみられた。
治療内容:
アシクロビルまたはフォスカルネット (acyclovir or foscarnet) の静脈内大量投与
+/- (併用または併用しない) 硝子体内ガンシクロビル ganciclovir
+/- (併用または併用しない) インターフェロン interferon
観察期間: 平均 14.5か月 ( 5-22か月)
視力経過: 5 眼 (41.7%) で 2段階の改善あり。最終視力は、4 眼 (33.3%)で 約 0.3 (snellen 20/60)以上, 4 眼 (33.3%)で 0.05 (20/400)以上, 4 眼 (33.3%)で0.05未満.
結論: 新生児ヘルペスの既往、脳外科手術、眼部外傷、大量ステロイド使用などの誘因、網脈絡膜瘢痕所見から、HSV 2型網膜炎の発症は本ウイルスの再活性化を反映したものと考えられる。

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2005/06/10 at 15:07

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Acute retinal necrosis 桐沢型ブドウ膜炎

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Acute retinal necrosis 症候群 (ARN 急性網膜壊死) に関する最近の眼科論文のうち、本文がフランス語で記載されている論文名とその要旨の邦訳を中心に本エントリーでお伝えいたします。[発表年、降順]で列記します。最近では、本症候群のうち、原因がヘルペスウイルスによるものは、necrotizing herpetic retinopathy 【壊死性ヘルペス性網膜症】, necrotic herpetic retinitis 【壊死性ヘルペス性網膜炎】ともよばれます。
本症候群名 「Acute retinal necrosis syndrome」については、1982年 Fisher J.Pら、Sternberg P Jr らが名づけたものですが、Hayreh SS の総説論文(1985年,下記の要旨参照)に述べられているように、以前から異なる病名で発表されていました。その第一報は、日本における 1971年報告の「桐沢型ブドウ膜炎」症例です。
論文名「網膜動脈周囲炎と網膜剥離を伴う特異な片眼性急性ブドウ膜炎について
東北大学 浦山 晃 先生,他が ARN などを伴う6症例を「桐沢型ブドウ膜炎」と名づけ、1971年 報告されました(臨床眼科 25(3):607-619,1971)。患者の発症時期は1959年(症例1)から1969年(症例6)迄です。英語論文でなかったため、その後日本の研究者が下記の病名で世界に紹介しました。
Kirisawa-type uveitis (Hayasaka S,他 1983年)
Kirisawa’s uveitis (Saga U,他 1983年)
Kirisawa-Urayama type uveitis (Usui M,他 1988年, Iizuka Y,他 1999年)
病名についての経緯、国内の論文、英語論文については、
ブログ second opinion 内の「Acute retinal necrosis (ARN) syndrome」関連エントリー
  日本のARN 症候群の特徴
    http://infohitomi.biz/archives/000037.html
  HSVによるARN 症候群の再発と誘因
    http://infohitomi.biz/archives/000038.html
  両側性 ARN syndrome
    http://infohitomi.biz/archives/000039.html
をご覧下さい。
J Fr Ophtalmol. 2004 Sep;27(7):795-800.
単純ペルペスウイルス 2型による髄膜脳炎を伴う両眼性 ARN 症候群. 1症例の報告
Bilateral acute retinal necrosis syndrome associated with meningoencephalitis caused by herpes simplex virus 2. A case report
Cardine S, Chaze PA, Bourcier F, Amara N, Prevost G, Ruhomauly H, Garandeau C, Maisonneuve L, Benzacken L.
Service d’Ophtalmologie, Centre hospitalier Robert Ballanger, Aulnay sous Bois.
序文: Acute retinal necrosis (ARN) 症候群は、ほとんどのケースで予後不良となる、まれなウイルス性疾患です。進行性網膜壊死、閉塞性血管炎、ときに眼外病変を伴う眼炎症を特徴とします。
症例報告: 症例は脳血管障害が疑われて紹介受診となった 62歳女性例です。眼科学的検査にて、広範な網膜壊死による重度の両眼視力障害がありました。前房水と脳脊髄液の PCR検査によって、単純疱疹ウイルス 2型による髄膜脳炎を伴う ARN 症候群と確定診断されました。腰椎部分の脊柱管狭窄に合併した疼痛のためステロイド薬を髄腔内注射したあと、単純疱疹ウイルス 2型が再活性化 (IgG+ , IgM-) したものと推測されました。治療として、アシクロビルの静脈内注射を 3週間行いました。4ヶ月後、両眼の網膜剥離を来たしました。
考案と結論:単純疱疹ウイルス 2型によるARN 症候群は、潜伏感染中のウイルスが神経系疾患の治療歴を有する患者で再活性化したり、ウイルスの先天性感染により発症することが多い。両側発症と合併症のリスクを減らすために抗ウイルス薬治療を早期に始めなければなりません。
J Fr Ophtalmol. 2004 May;27(5):538-46.
壊死性ヘルペス性網膜炎
Necrotic herpetic retinitis
Fardeau C.
Service d’Ophtalmologie, Hopital Pitie-Salpetriere, 91, boulevard de l’Hopital, 75013 Paris.
壊死性ヘルペス性網膜炎の診断は臨床的な根拠により、緊急で適切な静脈内および硝子体内治療を促すように行われます。ヘルペスウイルス物質の同定に際して、眼内検体に対するPCR法が最も成功します。単純疱疹ウイルスや帯状疱疹ウイルスによって起こる典型的な acute retinal necrosis syndrome および 正常免疫能患者や免疫能低下状態の患者に見られる異なる臨床病型について記述しました。鑑別診断として、トキソプラズマ症、梅毒、眼内リンパ腫によって起こる非典型的な網膜壊死所見を含みます。眼内検体は原因診断を確定するために役立ちます。急性期の治療戦略と予防治療について記述しました。臨床的な結果については、網膜壊死の拡大を阻止するような早期の適切な治療法が影響するようです。
J Fr Ophtalmol. 2004 Mar;27(3):223-36.
壊死性ヘルペス性網膜症の原因ウイルスと治療
Viral cause and management of necrotizing herpetic retinopathies
Tran TH, Bodaghi B, Rozenberg F, Cassoux N, Fardeau C, LeHoang P.
Service d’Ophtalmologie, Hopital Pitie Salpetiere, 47-83, boulevard de l’Hopital, 75013 Paris.
目的: 壊死性ヘルペス性網膜症の原因ウイルスと治療を研究する
方法: 1997年 3月から 2001年 6月までの期間中、急性網膜壊死 (acute retinal necrosis ARN) または、進行性外層網膜壊死 (progressive outer retinal necrosis PORN) と診断された患者の診療録を後向き調査した。PCR検査ないし眼内抗体産生の検出法による原因ウイルス決定のため、33症例から眼内検体を採取した。
結果: 平均年齢は 43.4歳。ヘルペスウイルス・ゲノムは 29症例 (80.5%) で同定された。ARN 群 (32 症例, 38 眼) では、単純疱疹ウイルス(HSV)DNA が 11 症例 (34.4%)で発見された。水痘帯状疱疹ウイルス(VZV) は 9症例 (28.1%), サイトメガロウイルス (CMV) は 4症例 (12.5%)であった。1症例 (3.1%)は Epstein-Barr ウイルス (EBV) 感染症であった。ARN 群では、初回検査時に 6症例が両眼性であり、経過中両眼性となった症例は 4症例であった。PORN 群 ( 4症例, 8 眼)では、網膜炎は両眼性であり、全例で VZV DNA が検出された。2症例はアシクロビル acyclovir 静脈注射, 6症例 フォスカルネット foscarnet 単独治療, 10症例 foscarnet + acyclovir 静脈注射, 18 症例は foscarnet 静脈注射とガンシクロビル ganciclovir 硝子体注射にて治療を行った。壊死性ヘルペス性網膜炎の合併症として、白内障 (26%), 視神経萎縮 (23.9%), 網膜剥離 (17.4%) であった。最終視力は 47.8% の症例で 0.1以下であった
結論: 病気の進行度と予後は、HSV, VZV, CMV によって起こるヘルペス性壊死性網膜炎では異なる可能性があるので、原因ウイルスを決定することは重要である。視力予後は、重点的な抗ウイルス治療により改善するが、合併症が発生すると視力不良となる。
J Fr Ophtalmol. 2004 Jan;27(1):7-13.
急性網膜壊死: 22症例の臨床像, 治療, 予後
Acute retinal necrosis: clinical presentation, treatment, and prognosis in a series of 22 patients
Morel C, Metge F, Roman S, Scheer S, Larricart P, Monin C, Laroche L.
Centre Hospitalier des Quinze-Vingts, Paris.
目的: 急性網膜壊死の診断例における臨床的結果と内科的治療について評価する
対象と方法: 1993年から2000年までの間に急性網膜壊死 22症例 が当科に紹介となった。臨床経過、最初の臨床症状から診断にいたるまでの遅れ、微生物学的プロフィール、治療、合併症について後向き調査を行った。
結果: 全症例が硝子体内炎症を呈していた; 網膜炎は症例の 82% に見られた。6症例 (27%) では、それでも診断が遅れ、初回眼科診察から抗ウイルス治療開始まで平均 5.5日の遅延があった。19症例に対して検査を実施し、ウイルス学的には、このうち 16症例で診断確定となった: 帯状疱疹ウイルス 11例, 単純疱疹ウイルス 1型 3例, 単純疱疹ウイルス 2型 1例, サイトメガロウイルス 1例 であった。9症例ではアシクロビルとフォスカルネットの併用治療を行い、13症例はアシクロビルの単独治療であった。アシクロビルを投与された 16症例中1例では、治療後 2日目には効果が見られず、フォスカルネット追加後に治癒した。治療終了時に 1症例にのみ再発が見られた。11症例に網膜剥離が発症し、全例増殖性硝子体網膜症を併発した。このうち、手術療法を受諾した 10症例中 7例は手術が成功した。22症例中 11例が最終視力 0.1まで、2例は 0.5まであった。
結論: 自験例では、アシクロビル acyclovir 単独治療は大部分の症例において十分有効であった。抗ウイルス治療を行っても、急性網膜壊死の予後は不良である。網膜剥離が主要な合併症である。
Hayreh SS は、1985年当時、acute retinal necrosis syndrome を1つの「眼疾患単位」と捉え、78症例に及ぶ症例報告を収集し、詳細な臨床的記述、病因、用語についてのレビューを行った。
Dev Ophthalmol. 1985;10:40-77.
So-called ‘acute retinal necrosis syndrome’–an acute ocular panvasculitis syndrome.
Hayreh SS.
抄訳: 汎ぶどう膜炎、網膜血管炎、網膜壊死 (続発性網膜剥離を高率に伴う)、高頻度にみられる視神経萎縮を特徴とする急性眼疾患は、これまで異なるエポニム eponym で報告されており、1971年の(訳者による追加: 浦山先生の) 第一報(訳者による追加: 6症例)以降の合計74症例 (103眼)の報告例と著者の発表症例 4例を合わせた 78症例 (107眼) をレビューした。基本病理像は、虹彩、脈絡膜、網膜、視神経乳頭の急性血管炎であり、脈絡膜、網膜、視神経乳頭の血管閉塞を来たす: 臨床像は汎ぶどう膜炎を伴うこれらの組織の虚血性病巣である。網膜壊死は本疾患にみられる多彩な病変の1つに過ぎないので、acute retinal necrosis syndrome と呼ぶよりも acute ocular panvasculitis syndrome (訳者による追加: 急性眼汎血管炎症候群) と呼称した方が相応しいと考える。 (訳者による追加: と著者 Hayreh SS は述べている。当時の研究では) 汎血管炎の原因は依然としてミステリーである。

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2005/06/08 at 15:27

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