evidence-based medicine

Archive for 12月 2004

検査薬 フルオレセインナトリウム Fluorescein sodium

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米国食品医薬品局FDAの評価と解説(日本語訳)をお知らせいたします。
· フルオレセインナトリウム (商品名 フルオレサイト注射液, フローレス試験紙など)
臨床では、主に眼科外来で使用します。注射液は糖尿病網膜症, 中心性漿液性網脈絡膜症, 網膜中心静脈閉塞症などの診断検査のために使用します。
リスク分類 「B」
生殖可能な時期の動物を対象とした対照研究では、胎児へのリスクはありませんでした。
適切で充分な対照研究は、妊婦に対して行われていません。
検査薬、点眼液、色素を染み込ませた試験紙、静脈内注射液 があります。
[胎児へのリスク]
動物では胎盤を通過します。
妊娠中、最初の2/3の時期では、動物(母体)に大量、反復投与を行っても胎児に副作用はありませんでした。点眼液であっても全身吸収はおこります。
ヒト妊娠中でのデータはありません。
[授 乳]
ヒト乳汁に分泌されます。
フルオレセインナトリウムの点眼であれば授乳は安全ですが、静脈内注射後であれば、授乳は推奨しません。その理由は、乳児において光線過敏症 phototoxic reactions を来たすからです。
カテゴリ「A-X」については、
http://category.xrea.cc/drugs/000001.html
のリンク先でご確認下さい。
FDA: A, B, C, D, X
TGA: A, B1, B2, B3, C, D, X

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2004/12/21 at 14:51

カテゴリー: 妊娠、授乳とクスリ

妊娠 出産 網膜剥離 糖尿病網膜症 感染性眼内炎

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妊娠中、出産前後に起こる重篤な眼病変として、
(1) 妊娠中毒症による 脈絡膜循環障害、循環障害に続発した 非裂孔原性網膜剥離
(2) 妊娠糖尿病による 糖尿病網膜症 の急性増悪
(3) 人工中絶 (流産)、出産に伴う全身感染症(敗血症)に合併した眼内炎 (下記論文参照)
などがよく知られています。
その他、
(4) HELLP 症候群 (Weinstein, 1982年: H-溶血, EL-肝臓酵素の上昇, LP-血小板数低下) とよばれるまれな妊娠合併症では、視力低下、皮質盲、網膜中心静脈閉塞、網膜出血、網膜浮腫、網膜剥離の報告がありますが、子癇前症や高血圧症を合併している妊婦にみられているようです。
産科で用いる医学用語の一部:
· 妊娠中毒症などにより全身痙攣を来たすと、子癇 (しかん eclampsia) とよばれます。子癇前症 (または、前子癇 preeclampsia ) とは、妊娠中毒症のことです。妊娠中毒症とは、「妊娠時の高血圧」に関連した症候群のことです。
· 出産のことを分娩 (ぶんべん) ともいいます。分娩後 (postpartum) 、母体が妊娠前の状態に戻るまでの期間 (約8週間) を産褥 (さんじょく) 期とよびます。この時期に性器・生殖器の細菌感染によって発熱すると、産褥熱 (さんじょくねつ) とよばれ、重篤な場合、産褥敗血症 (puerperal sepsis) です。
妊娠中、出産直後の眼内感染症は、医療先進国では、ごくまれな合併症ですが、発見、治療が遅れると、感染性眼内炎では失明し、生命にとっても非常に危険です。主に、発展途上国では桿菌やコアグラーゼ陽性球菌などの細菌によって起こりますが、まれな真菌感染症のケース報告2編の論文要約を邦訳し掲載します。
なお、国内では、横須賀の米軍病院での報告例 A群 β溶血連鎖球菌 による産褥敗血症 (帝王切開術後) の報告例があります (眼病変の記述なし. 出典文献のみ掲載)。
妊娠中のカンジダ性敗血症に対するフルコナゾール治療: 症例報告と文献レビュー
Infection. 1996 May-Jun;24(3):263-6.
Fluconazole in Candida albicans sepsis during pregnancy: case report and review of the literature.
Wiesinger EC, Mayerhofer S, Wenisch C, Breyer S, Graninger W.
Dept. of Internal Medicine I, University of Vienna Medical School, Austria.
妊娠中のカンジダ性敗血症はまれであるが、カンジダ アルビカンス Candida albicans による重篤な感染症の1つである。他の抗菌薬に比べて、妊娠中の抗真菌薬の全身投与については臨床使用経験がごく限られている。最近の報告ではアンフォテリシン B が注目されている。自験例では、中心静脈カテーテルによる高カロリー栄養剤と広域抗菌薬の投与後に生じた口腔・性器粘膜のカンジダ感染症とともに、カンジダ性敗血症、眼内炎を来たした妊婦症例を報告する。フルコナゾール 10 mg/kg fluconazole を妊娠第16週から50日間投与された。有害事象はみられず、妊娠後経過は母体、ベビーともに順調であった。
分娩後の内因性カンジダ眼内炎
J Formos Med Assoc. 2002 Jun;101(6):432-6.
Postpartum endogenous Candida endophthalmitis.
Tsai CC, Chen SJ, Chung YM, Yu KW, Hsu WM.
Department of Ophthalmology, Taipei Veterans General Hospital, Taipei, Taiwan.
カンジダ アルビカンス Candida albicans は、眼内の真菌感染症を起こす最も多い起炎菌である。しかし、非常にまれな感染症である。出産後の33才の症例は、5日前に視力低下を自覚し、血液培養にてC. albicansが検出された。眼底検査にて、硝子体混濁と境界不鮮明な網膜前白色病変を多数みとめた。全身検査にて、急性腎不全と心肥大がみられた。抗真菌薬の静脈内投与、硝子体手術、硝子体内への抗真菌薬注射により、全身および眼内の感染症は根治した。
分娩後遅れて発症し後腹膜病変を伴ったA群溶血連鎖球菌性産褥敗血症: 症例報告
Am Surg. 2004 Aug;70(8):730-2.
Group A streptococcal puerperal sepsis with retroperitoneal involvement developing in a late postpartum woman: case report.
Okumura K, Schroff R, Campbell R, Nishioka L, Elster E.
Department of Surgery, United States Naval Hospital Yokosuka, Japan.

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2004/12/15 at 12:35

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免疫抑制治療 壊死性強膜炎 慢性関節リュウマチ

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癌治療薬 (抗悪性腫瘍薬) を使用し、生体の免疫反応を抑制する治療は、cytotoxic immunosuppression とよばれていますが、適切な日本語がないので「殺細胞性免疫抑制治療」と訳します(注 1)。下記論文は、ステロイド薬や非ステロイド性消炎薬を10年間使用した症例に比べて、cytotoxic immunosuppression 治療例の方が全身、眼局所の予後が良いことを死亡率などで比較した論文 (Fosterら, 1984年)です。なお、現在では免疫抑制薬として画期的な新薬が多く開発され、より免疫抑制治療も進歩していますが、壊死性強膜炎などの重篤な眼合併症を伴う慢性関節リュウマチ症例では、充分な薬物治療が必要であることに今も変わりはありません。
壊死性強膜炎ないし周辺部角膜潰瘍を来たした慢性関節リュウマチ患者の死亡率. 全身性免疫抑制の効果.
Ophthalmology. 1984 Oct;91(10):1253-63.
Mortality rate in rheumatoid arthritis patients developing necrotizing scleritis or peripheral ulcerative keratitis. Effects of systemic immunosuppression.
Foster CS, Forstot SL, Wilson LA.
[論文要約の邦訳]
壊死性強膜炎、周辺部角膜潰瘍を来たした慢性関節リュウマチ 34 症例を対象とし、殺細胞性免疫抑制薬による治療(注 1)ステロイドおよび非ステロイド性消炎薬による治療 の眼局所および全身的効果を比較した (非ランダム化臨床試験)。
通常治療を行った17症例中9例は、10年間の臨床試験中に血管に関連した事象により死亡した。17症例中13例では、眼炎症が進行し、5例では、致死的ではなかったが眼外の血管炎病変を来たした。
長期間に及ぶ免疫抑制薬治療を行った17症例中1例は、10年間の臨床試験中に死亡した。本症例は免疫抑制薬中止後に死亡した。免疫抑制薬を使用した患者は、治療中には眼外の血管炎を来たさず、眼部の破壊的病変の進行もみられなかった。
本臨床試験より、壊死性強膜炎ないし周辺部角膜潰瘍を来たした慢性関節リュウマチ患者において、眼部は 潜在的で致死的な全身性血管炎の鋭敏な指標 であることを強調したい。死亡率のデータから、殺細胞薬はこれら症例にとって全身と眼部の予後を有利な方向に変化させる可能性を強く示唆している。

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2004/12/12 at 20:37

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Pain in dreams 夢の中の痛み

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夢の中の痛みに関して、Nielson, Zadra らの2編の論文 (要約) を紹介いたします(同施設、カナダ)。
1993年の第一論文では、睡眠中の被験者に体性感覚刺激を与えると、夢の中で痛みを感じたというものです。
1998年の第2論文では、185名を対象とした後向き調査と2週間の夢の記録から、夢で経験する痛みの頻度と性質を報告しています。半数近くの参加者が過去に同様の夢を感じており、2週間、合計 3,045回の夢記録中、はっきりとした痛みを伴う夢 18回が含まれていたそうです。
注) 残念ながら、邦訳者(私) は心理学や夢・精神分析については専門外ですので、2編の論文中の専門用語の邦訳や文意などは不正確かもしれません。よって、詳しい内容にご興味がある方は、是非、専門家にお尋ねください。
Sleep. 1993 Aug;16(5):490-8.
Pain in dreams.
Nielsen TA, McGregor DL, Zadra A, Ilnicki D, Ouellet L.
Laboratoire du Sommeil, Hopital du Sacre-Coeur de Montreal, Quebec, Canada.
[要約の邦訳]
“夢の中での痛み pain in dreams” については、殆ど知られていない。いくつかの研究では、まれなことであり、夢をみるという表象能力では説明できないかもしれないと言われている。しかしながら、今回の研究では、レム睡眠 (REM Rapid Eye Movement sleep)中に与えた体性感覚刺激により、実験中偶然に、夢で感じた痛み( dreamed pain )体験が得られたので報告する。
今回の研究中に夢で感じた痛みを1回でも経験した5人の中から、「夢」を選別した。被験者は、20回の夜で42回の刺激試験を受け、合計13回 (31%)の夢(単回ないし複数回の痛みに関連した)を報告した。
殆どの場合、刺激によって誘発された現実の感覚が直接的に変化することなく夢に組み込まれているようであった。痛みは、これらの夢の大部分において、主要な動機となっており、多くのケースで激しい感情–典型的なものは怒り–と関連していた。
しばしば、夢は痛みから解放される(軽くなる)被験者の試みを描いていた。数名においては、その行動は反復されており、他の被験者では、その目的は比喩的に夢の中で演出されていた。
この結果から、痛みは夢の中では稀であるが、それでも夢をみるという表象的コードに一致している。さらに、痛みと夢内容の関連性から、レム睡眠 (REM Rapid Eye Movement) 中の有痛刺激の制御において、脳幹や大脳辺縁系の中枢が深く関わっているのかもしれない。
Pain Research and Management.1998;3(3):155-161.
http://www.pulsus.com/Pain/03_03/zadr_ed.htm
The nature and prevalence of pain in dreams
AL Zadra, TA Nielsen, A Germain, G Lavigne, DC Donderi
[要約の邦訳]
背景,目的: (邦訳を省略します.)
方法: 研究参加者 185名が質問表すべてに回答し, 2週間でみた夢を記録した。
結果: 質問表を用いた後向き調査では、50%に近い参加者が、少なくても1回は夢の中で痛みを経験している。自宅でみた計3045回の夢の記録の中で 18回の夢において、はっきりした痛みのことが含まれていた。
考案: 夢の中での痛みの感覚は、身体の特定の部位に限局し、リアリスティクに報告されており、典型的には、(夢の中で)暴力的な出来事に遭遇したことで感じ、しばしば、激しい情緒変化を伴っている。痛みのような感覚的な経験が夢の中でどのように発生するかについての説明モデルを提案する。
結論: 痛みのイメージ表現に関係する認識システムは、夢をみているときも時々機能している。

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2004/12/09 at 20:51

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エイズウイルス HIV-1 HIV-2 眼病変 重症度

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HIV-2 感染患者にみられる眼病変の程度は、HIV-1に比べて軽度とも言えるが, ···
HIV-1, HIV-2 感染患者における臨床像の対比
Eur J Ophthalmol. 1993 Jan-Mar;3(1):13-20.
Clinical correlations in HIV-1 and HIV-2 infected patients.
Monteiro-Grillo M, Sousa AP, Galvao J, Yueh M, Neves C, Ribeiro-da-Silva J.
Lisbon University Eye Clinic, Santa Maria Hospital, Lisboa, Portugal.
[要約の邦訳]
ポルトガルでは、HIV-2 (ヒト免疫不全エイズウイルス-2) 血清陽性者の頻度は、他のヨーロッパ諸国や北アメリカに比べて多い。最近の文献データは、HIV-1, HIV-2 両ウイルスの病原性と自然経過の差異を指摘し、HIV-2 の毒力がより低いことを示唆している。これらの仮説とHIV-2 症例の増加に直面して、著者らはHIV-1, HIV-2 両感染群における眼病変との関連性や眼症状・所見の差異を究明するため、両群を解析した。
各病期のHIV感染患者 214症例について、前向き 臨床研究を行った。83% は HIV-1 で、17% は HIV-2 であった。眼所見は両群にみられたが、その頻度は HIV-1 (48%) であり、HIV-2 (19%) に比べて有意に高かった (p < 0.005)。本症の診断と予後に関して特に重要な眼病変は、非感染性網膜症、感染性網膜炎、神経眼疾患といわれているが、これらすべての眼所見は、HIV-1群に見られた。HIV-2群で最も多い病変では、非感染性網膜症であった。眼病変の有無による AIDS患者の生存率を比較したところ、眼病変を有する症例は有意に生存時間が短かった ( HIV-1群 p < 0.001, HIV-2群 p < 0.05)。
HIV-2感染患者では眼病変の重症度は低いとも言えるが、両群間で臨床像が類似している点も存在する。

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2004/12/03 at 21:26

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